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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第1章 満ちる月、満ちない気持ち



ダンブルドアは満足げに微笑み、机の上にひとつの封筒と小さな紙切れを置いた。


「これは少女に渡してほしい。ホグワーツからの入学許可証じゃ。あと、彼女のいる場所の住所じゃよ」


やがて、ダンブルドアは再び長いローブを揺らし、帰っていった。

残されたリーマスは、冷めきったコーヒーをひと口すすり、静かに書き置きを手に取った。



――チユ・クローバー


それが少女の名だった。
ホグワーツ入学まで、共に過ごすことになる。



「……まったく。どうして私なんだ」



そうぼやきながら、くたびれた鞄に必要なものを詰める。
皺だらけのローブを手で撫でつけ、少しでもきちんとして見えるように整える。

リーマス・ルーピンは、孤児院の少女――チユに会うため、長く続いた孤独な生活を、今、わずかに動かそうとしていた。
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