第1章 満ちる月、満ちない気持ち
ダンブルドアは満足げに微笑み、机の上にひとつの封筒と小さな紙切れを置いた。
「これは少女に渡してほしい。ホグワーツからの入学許可証じゃ。あと、彼女のいる場所の住所じゃよ」
やがて、ダンブルドアは再び長いローブを揺らし、帰っていった。
残されたリーマスは、冷めきったコーヒーをひと口すすり、静かに書き置きを手に取った。
――チユ・クローバー
それが少女の名だった。
ホグワーツ入学まで、共に過ごすことになる。
「……まったく。どうして私なんだ」
そうぼやきながら、くたびれた鞄に必要なものを詰める。
皺だらけのローブを手で撫でつけ、少しでもきちんとして見えるように整える。
リーマス・ルーピンは、孤児院の少女――チユに会うため、長く続いた孤独な生活を、今、わずかに動かそうとしていた。