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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第1章 満ちる月、満ちない気持ち



「けれど、ハリーと私がその少女を預かることと、何が関係あるんですか?」


リーマスの声には、戸惑いと困惑が滲んでいた。



「大いに関係あるのじゃ」



ダンブルドアは柔らかく微笑む。


「ハリーには、その少女と出会う必要がある。けれど、彼女を救えるのは君だけなのじゃよ、リーマス」


「……脅しのつもりですか」

「そう捉えてもらっても構わんよ」


ダンブルドアは愉快そうに、ひとつ笑った。

リーマスは深く息を吐き、目を伏せた。


「どうして……どうしてその少女とハリーが出会わねばならないんです?それに、どうして私にしか救えないなんて……」

「時が来れば、わかるじゃろう」



ダンブルドアの言葉はいつも通り曖昧で、核心に触れることはない。


けれど、リーマスはもう知っていた。彼がどれほど問うても、明確な答えなど最初から返ってこないのだと。


それでも、目の前のこの男の言葉には、何故か逆らえなかった。
彼の言葉には、重みと……不思議なあたたかさがあった。



「無理です。私は……私はもう、誰も傷つけたくない」


リーマスは静かに顔を伏せた。



――そして、誰も失いたくない。


その想いだけが、胸の奥で痛みを放ち続けていた。



「わしは信じておるよ」


ダンブルドアの声は、どこまでも優しかった。
「リーマスは、昔から心優しくて頼りになる男じゃからのう」



かつて、人狼である自分をホグワーツに受け入れてくれたこと。
変身時に身を隠すための場所を、わざわざ『叫びの屋敷』として用意してくれたこと。

誰よりも自分を『生徒』として、1人の人間として扱ってくれたのは、このダンブルドアだった。


「信じておる」――あのときと同じ言葉が、胸の奥を震わせる。


リーマスは、重たい沈黙のなか、ようやくうなずいた。

渋々ではあったが、少女を預かることを承諾したのだ。


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