第3章 フローリシュ・アンド・ブロッツ書店
チユは、ハリー、ロン、ハーマイオニーの3人と並んで、石畳の曲がりくねった道を歩き出す。
ハリーのポケットからは、じゃらじゃらと楽しげな音が鳴っていた。
あれはきっと、革袋いっぱいのガリオンやシックルたち。
「うるさいな、金貨のくせにごきげんなんだから」
とロンがからかい、ハーマイオニーは「そういうこと言うから、失くすのよ」と呆れたように笑う。
ハリーはというと、そんな2人をなだめながら、アイスクリーム屋の前で足を止めた。
「じゃあさ、これくらいならいいよね」
そう言って、イチゴとピーナッツバターの大きなアイスを4つ買ってくれた。
「わ、冷たい!でも、おいしい」
チユは、甘いひと口に目を丸くした。
みんなでペロペロとアイスを舐めながら、ウィンドウ・ショッピングを楽しんで歩いた。
ロンは『高級クィディッチ用具店』の前でぴたりと止まり、チャドリー・キャノンズのユニフォームをうっとりと見つめて動かない。
「ロン、行くよ!もう!」
ハーマイオニーが半ば無理やりロンのマントを引っ張って、隣のインクと羊皮紙の店へと押し込んだ。
そのあと『ギャンボル・アンド・ジェイプスいたずら専門店』の前でにぎやかな声が聞こえてきた。
「やっぱりいた!フレッド、ジョージ!」
リー・ジョーダンも一緒だった。
3人とも、すっかり陽気な空気で、『ドクター・フィリバスターの長々花火一火なしで火がつくヒヤヒヤ花火』をまとめ買いしている。
「……それ、学校に持ち込むの?」
「当然だろ?戦(いくさ)に武器は必要だぜ」
「初日から見せてやるよ、ホグワーツの伝統ってやつをな!」
そう言って肩を組まれたチユは、思わず笑ってしまった。
ほんの少し不安だった新学期が、なんだか少しだけ楽しみに思えてくる。