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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第3章 フローリシュ・アンド・ブロッツ書店



「あの家族は厄介よ。無理して火花を散らさないようにね」

そう呟いたモリーおばさんに、アーサーおじさんは眉をひそめた。


「何かね、私がルシウス・マルフォイに敵わないとでも?」

不機嫌そうに返しかけたが、ふと視線の先にハーマイオニーの両親が立っているのに気づくと、たちまち表情がほころんだ。

大理石のホールの端から端まで伸びるカウンターのそばに、ハーマイオニーの両親が不安げに立っていた。紹介してくれるのを待っているのだろう。


「なんと、マグルのお2人がここに!」

アーサーおじさんが目を輝かせて声を上げる。


「一緒に1杯いかがですか!……あぁ、そちらにお持ちなのは?ナポンド紙幣ですかな?マグルのお金を換えていらっしゃるのですか。モリー、見てごらん!」

興奮した様子で、グレンジャー氏の持つ紙幣を指差していた。


「さてチユ、君はどうする?」


アーサーおじさんが、やわらかく問いかけてくる。


「ここで待っていてもいいが……着いてきてもかまわないよ。ほら、小鬼たちは君が乗ることに文句は言っていないようだ」


チユは少しだけ躊躇した。


彼女はリーマスから必要な分の金貨をすでに受け取っている。ホグワーツで使う教材やお菓子の代金まで、全部計算されていた。

だから、わざわざ金庫まで行く必要は無いが――


「行ってみたいです!」


それは、心からの言葉だった。

魔法界の銀行。地下の金庫。
そう聞いただけで、どこか秘密基地のような匂いがする。
知らないことを知りたいという好奇心には、抗えなかった。


「よし、それじゃあ一緒に行こう!」とアーサーおじさんが微笑み、小鬼の案内で、一行はトロッコ乗り場へと進んでいく。

鉄のレールに乗せられた小さなトロッコ。
金属の軋む音を立てながら、トンネルの入口に止まっていた。

チユは足をかけたものの、改めて見上げて小さく息を呑む。


「こ、これに……乗るの……?」


「そうだよ、けっこうスリルあるぜ」
ロンがニヤッと笑った。

「最初はびっくりするけど、楽しいよ」
隣のハリーは、もう慣れた様子でトロッコに飛び乗る。


チユは、ハリーとロンの間にちょこんと座り、そっと息を吸った。
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