第3章 フローリシュ・アンド・ブロッツ書店
「ああ……本当に……無事でよかったわ、チユ、ハリー」
モリーおばさんがそっと2人の頬に手を添え、優しく微笑んだ。
その手のぬくもりが、胸の奥にじんわり染みこんでいく。
大勢の人が行き交う賑やかな横丁の中で、チユはようやく現実に戻ってきたような気がした。
「どこから出てきたんだい?」と、ロンが不思議そうに尋ねた。
「夜の闇横丁だ」
ハグリッドが暗い顔をして答えたその瞬間――
「すっげぇ!」
「うっそ、マジで!?」
フレッドとジョージが揃って叫び声をあげた。
「僕たち、そこに行くの、絶対ダメって言われてるのに!」
ロンは目を輝かせながらも、どこか悔しそうに言った。
「そりゃあ……その方がずっとええ」
ハグリッドがうめくように言い、重たく息を吐いた。
チユは小さく身をすくめた。ハリーがそんな怖い場所にいたなんて――想像するだけで、背筋がぞくっとした。
「さあ、もう行かにゃならん」
ハグリッドが言って歩き出そうとしたとき、モリー夫人がその大きな手をぎゅっと握りしめた。
「夜の闇横丁ですって……! ハグリッド、あなたがハリーを見つけてくださらなかったら、どうなっていたことか……!」
「へへ、たいしたことじゃないさ」
ハグリッドは照れたように鼻を鳴らし、手を振った。
「みんな、ホグワーツで、またな!」
そう言って、大股で人波の中を歩いていく。その姿は群衆の中でもひときわ目立ち、大きな肩と頭が最後まで見えていた。