• テキストサイズ

ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第3章 フローリシュ・アンド・ブロッツ書店



「ああ……本当に……無事でよかったわ、チユ、ハリー」

モリーおばさんがそっと2人の頬に手を添え、優しく微笑んだ。
その手のぬくもりが、胸の奥にじんわり染みこんでいく。


大勢の人が行き交う賑やかな横丁の中で、チユはようやく現実に戻ってきたような気がした。


「どこから出てきたんだい?」と、ロンが不思議そうに尋ねた。

「夜の闇横丁だ」
ハグリッドが暗い顔をして答えたその瞬間――


「すっげぇ!」
「うっそ、マジで!?」


フレッドとジョージが揃って叫び声をあげた。


「僕たち、そこに行くの、絶対ダメって言われてるのに!」
ロンは目を輝かせながらも、どこか悔しそうに言った。

「そりゃあ……その方がずっとええ」
ハグリッドがうめくように言い、重たく息を吐いた。

チユは小さく身をすくめた。ハリーがそんな怖い場所にいたなんて――想像するだけで、背筋がぞくっとした。


「さあ、もう行かにゃならん」


ハグリッドが言って歩き出そうとしたとき、モリー夫人がその大きな手をぎゅっと握りしめた。


「夜の闇横丁ですって……! ハグリッド、あなたがハリーを見つけてくださらなかったら、どうなっていたことか……!」

「へへ、たいしたことじゃないさ」
ハグリッドは照れたように鼻を鳴らし、手を振った。


「みんな、ホグワーツで、またな!」


そう言って、大股で人波の中を歩いていく。その姿は群衆の中でもひときわ目立ち、大きな肩と頭が最後まで見えていた。

/ 300ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp