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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第3章 フローリシュ・アンド・ブロッツ書店


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2年生は次の本を準備すること。

『基本呪文集(2学年用)』

『泣き妖怪バンシーとのナウな休日』
ギルデロイ・ロックハート著

『グールお化けとのクールな散策』
ギルデロイ・ロックハート著

『鬼婆とのオツな休暇』
ギルデロイ・ロックハート著

『トロールとのとろい旅』
ギルデロイ・ロックハート著

『バンパイアとバッチリ船旅』
ギルデロイ・ロックハート著

『狼男との大いなる山歩き』
ギルデロイ・ロックハート著

『雪男とゆっくり1年』
ギルデロイ・ロックハート著

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「……多っ!」

思わず、声がもれた。


タイトルを見ていくだけで、なんだか頭がくらくらする。どれもこれもロックハート、ロックハート、ロックハート。


そのとき、隣からフレッドが身を乗り出して、チユのリストをのぞき込んだ。


「おおっと! 姫のもロックハートのオンパレードじゃんか!ロックハートランドへようこそ!たぶん防衛術の新しい先生、よっぽどのファンなんだぜ。絶対、魔女だな」


得意げにそう言ったところで、フレッドの視線がふと母親とばっちり合った。モリーおばさんの眉がぴくりと動く。


「あ、いや、その……ママレード取ってくれる?」


フレッドは慌ててトーストにママレードを塗りたくり始めた。


「でもさ、笑いごとじゃないんだよな。ロックハートの本、1冊でも高いのに、これだけ揃えたら……いたずら商品がいくつ買えることやら」ジョージが続いた。

「ロケット花火1年分ってとこかな」


ジョージがさりげなく両親のほうをちらりと見てつぶやくと、モリーおばさんが小さくため息をついた。


(……こんなにたくさんの本、しかも全部新品で買うとなると……)


思わず、手元のリストを握る指に力が入る。


(リーマスに負担をかけてしまう……)


今年も、養父であるリーマスが、彼女の学用品を揃えてくれる予定だった。
れど、彼がどんな生活をしているかは、チユ自身、よく知っていた。

仕事は安定せず、体調もいつも万全とは言えない。
それでも「チユには何不自由なく学ばせたい」と微笑む彼の顔が、頭の中に浮かぶ。


──そして、そのやさしい瞳の奥にある、ほんのわずかな疲れの色も。
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