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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第3章 フローリシュ・アンド・ブロッツ書店



ある晴れた朝、澄みわたる空の下――
ホグワーツからの手紙が届いた。

チユはハリーやロンと並んで、まだ寝ぼけまなこのまま台所へと下りていく。
階下からは、食器の音と、モリーおばさんの優しい鼻歌が聞こえていた。


テーブルにはすでにモリーおばさんとジニーが座っていて、朝食の準備が進んでいた。
ジニーはハリーの姿を見るなり、手にしていた皿を取り落とし、オートミールが床に散らばった。


ジニーの頬がりんごのように真っ赤になり、チユは思わず笑いをこらえた。


――ジニーってば、本当にわかりやすい。


そのとき、アーサーおじさんがぽん、と封筒を3つ手に掲げた。


「学校からの手紙だ」


黄色みがかった羊皮紙に、深緑色のインクで丁寧に名前が書かれている。
見慣れた封筒だけれど、受け取る瞬間にはいつも少しだけ胸が高鳴った。


「ダンブルドア先生は、君たちがここにいることをとっくにご存じだ!なに1つ見逃さないお方だよ、本当に」


そう言いながら、アーサーおじさんはユーモラスに目を見開いてみせる。


「おはよう……って、手紙?」


パジャマ姿のフレッドとジョージが、寝ぼけた様子でのそのそと台所へ入ってきた。


「今年も来たか、出費の手紙」
「靴下が何足いるかって話だろ?」


2人は肩をすくめてパンをつまみ食いしながら椅子に座った。

台所がしばらく静かになった。皆がそれぞれの手紙を開いて目を通す。


チユの手元にも、去年と同じ文面が並んでいた。
――9月1日、キングズ・クロス駅の9と4分の3番線からホグワーツ特急に乗車。
その下には、新学期用の教科書や用品のリストが丁寧に記されていた。


「また、始まるんだ」


チユは思わずつぶやいた。
夏のあたたかな日々の中で、ホグワーツのことを少し遠く感じていた自分に気づく。


「またみんなに会えるね」
そう言って、チユは小さく笑った。


ハーマイオニーやネビル、ハグリッド、そしてゼロにも――


「なんか、いよいよって感じだよな」


ロンがポツリとつぶやき、ハリーが小さく頷いた。


チユはふと、窓の外を見つめた。
青空がどこまでも広がっていた。


新学期が近づくたび、胸の奥がきゅっと締めつけられるような、でも同時に少しだけ、楽しみでもあった。
少しずつ自分の居場所ができていくような、不思議な気持ち。
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