第2章 秘密の夏休み
「ごひいきのクイディッチ・チームかい?」
ハリーが、壁一面に貼られたクィディッチのポスターを見て尋ねた。
「チャドリー・キャノンズさ」ロンが即答した。
「今シーズンは9位。根強いファンが多いんだよ。父さんも応援してるし、僕もずっとこのチームなんだ」
ロンはオレンジ色のベッドカバーを指差す。
そこには黒く大きなCの文字が2つと、風を切る砲弾のようなロゴが縫い込まれている。
窓際には、ロンの杖が無造作に置かれており、その下の水槽には、ぷるぷると震えるカエルの卵がびっしりとくっついていた。
そのすぐ脇では、ロンのペットである太っちょの応ネズミ・スキャバーズが、陽だまりの中で気持ちよさそうに丸くなって眠っていた。
床には『勝手にシャッフルするトランプ』が散らばっていて、チユはそれを軽やかにまたいだ。
ふと、窓の外に目を向けると――
「……あっ」
チユの唇から、小さな声が漏れる。
「どうしたの?」
ハリーが尋ねると、チユは指先で外の野原を指した。
「見て。あそこ……庭小人たち、戻ってきてる」
思わず笑いがこぼれる。
遠く下の方の野原では、庭の垣根をくぐって、1匹、また1匹と小さな影たちが、そろそろと庭へ戻ってきていた。
振り返ると、ロンがじっとハリーの顔を見つめていた。
その目はどこか不安げで、少しだけ期待も混じっている。きっと、自分の部屋をどう思われているのか、気になっているんだ。
「……ちょっと狭いけど」
ロンは少し早口で言った。
「君のマグルのとこの部屋みたいに広くないし……それに、この部屋、屋根裏のお化けの真下なんだ。あいつ、夜中にパイプ叩いたり、うめいたりするし……寝るの、ちょっと勇気いるんだよ」
「ロン……」
ハリーは目を細めて、パッと明るく笑った。
「僕、こんな素敵な家、初めてだよ」
その言葉には、偽りのない温かさがこもっていた。
ロンの顔が、耳の先までぽっと赤く染まった。
チユも思わず口元をゆるめた。