第17章 折れた杖と残されたもの
「いやいや、あれは立派な“お別れシーン”だったよな、ジョージ?」
「……まぁ、見せつけられたよな」
フレッドは面白そうに笑っているが、ジョージの声音だけは妙に低く、目元も笑っていなかった。
「おいおい、頭ポンなんて簡単にさせちゃっていいのか?俺ら以外に」
チユが言葉を詰まらせた隙に、ジョージはそっと彼女の頭に自分の手を置いた。
「次からは、こういうのは――ちゃんと考えてから受け取れよ」
そう呟いた声は、軽口に聞こえなくもないが、どこか刺さるような真剣さが滲んでいた。
フレッドが片眉を上げて吹き出す。
「おやおや、僕の双子も案外独占欲が強いじゃないか」
「うるさい」ジョージはそっけなく返すが、耳の先がほんのり赤い。
「なぁに、俺たちの大事な妹分を泣かせるような男じゃなきゃいいさ」
そう言って、フレッドとジョージはチユの両肩にがっしり腕を回し、人混みの中へと引っ張っていった。
双子は大きなトランクを軽々と担ぎながら、
「夏休み、爆発スナップ大会を計画中だ!」
「もちろんチユ、君も招待状を受け取る覚悟しとけよ!」と声をかけてくる。
チユは「うん、楽しみにしてる!」と笑って答えた。
そのとき、向こうからロンとハーマイオニー、そしてジニーと合流した。
ハリーも荷物を抱えて駆け寄ってくる。
――キングズ・クロス駅に着く直前、コンパートメントの中で。
ふとハリーが思い出したようにジニーへ問いかけた。
「ジニー――パーシーが何かしてるのを君、見たよね。パーシーが誰にも言うなって口止めしたって、どんなこと?」
「あぁ、あのこと」ジニーがクスクス笑った。
「あのね、パーシーにガールフレンドがいるの。レイブンクローの監督生、ペネロピー・クリアウォーターよ」
「なんだって!?」フレッドとジョージが声を揃えて叫ぶ。
「パーシーは夏休みの間、ずっとこの人にお手紙書いてたわけ。学校のあちこちで、2人でこっそり会ってたの。ある日、5人がからっぽの教室でキスしてるところに、たまたまあたしが入っていっちゃって……。それで、ペネロピーが襲われたとき、パーシーはとっても落ち込んでたの。みんな、パーシーをからかったりしないわよね?」