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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第17章 折れた杖と残されたもの




ジニーが心配そうに見渡すと、フレッドはにやりと笑って肩をすくめた。


「夢にも思わないさ。なぁ、ジョージ?」


「絶対にしないよ」ジョージがニヤニヤ笑いながら言ったが、その目は「これは最高のネタだ」と物語っていた。



ホグワーツ特急は速度を落とし、とうとう停車した。
白い蒸気がもうもうと立ちこめる中、ハリーは羽根ペンと羊皮紙の切れ端を取り出し、チユ達のほうを向いて言った――。


「これ、電話番号って言うんだ。去年の夏休みに、ロンのパパに電話の使い方を教えたから知ってるはずだよ。チユももし使う機会があったら、電話してくれ。ダーズリー家に電話してくれよ。2か月もダドリーしか話す相手がいないなんて、僕、耐えられないんだ」



ハリーは羊皮紙を取り出し、走り書きした番号を3人に渡した。



ハーマイオニーは真剣な顔で言った。
「でもね、あなたのおじさんやおばさんだって、今学期のことを聞いたら、きっと誇りに思うんじゃない?」


「誇りに?」ハリーは苦く笑った。
「正気で言ってるの?僕が死にかけたのを“死にそこなった”ってしか思わないさ。あの連中はきっとカンカンだよ」



チユは立ち止まり、じっとハリーを見つめた。
「……でも、私にとっては誇りだよ。ハリーが無事で、ちゃんと戻ってきてくれたこと。それだけで十分」



ハリーの表情が少しだけ和らぎ、彼は照れ隠しのように前を向いた。
そして、そのままマグルの世界へと繋がる壁に、並んだ。


チユは、胸に残る笑顔や約束、そしてまだ秘密にしたままの羽根の重みを抱えて歩き出した。



「9月になったら、またここで――」
小さく呟いて、チユは振り返らずに壁を通り抜けた。


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