第17章 折れた杖と残されたもの
ロックハートを連れて医務室へ向かう道のりは、予想以上に骨が折れた。
記憶を失ったロックハートは上機嫌で、廊下に響き渡るほど大きな声で喋り続ける。
やっとの思いで医務室に着くと、マダム・ポンフリーが腕を組んで待っていた。
「また厄介なのを連れてきましたね!」
とんでもなく冷たい声で言いながらも、彼女はすぐにロックハートをベッドに押し込んだ。
「もう、あとは私が見るから。あなたたちは、そこで休みなさい」
そう追い払われるように言われ、ロンとチユは肩をすくめ合った。
しばらくして、医務室の扉が再び開いた。
入ってきたのはハリーだった。
疲労に覆われてはいたが、その目はどこか決意の光を宿していた。
「どうだった?」
ロンが身を乗り出して聞く。
ハリーはベッドの端に腰掛け、2人の顔を順に見てから深く息をついた。
「……全部話すよ」
そして彼は語り始めた。
自分がパーセルマウスである理由――『例のあの人』に殺されかけた時、力の一部を受け取ってしまったこと。
組み分けの時、スリザリンにも入れると言われたが、自分はグリフィンドールを選んだこと。
その結果、真のグリフィンドールにしか扱えない剣を手にしたこと。
チユは息を呑んだ。
「……じゃあ、あの剣が出てきたのは、ハリーが自分で選んだから、なんだね」
ハリーは続けた。
「それに……校長室にルシウス・マルフォイが来た」
ロンが目をむいた。
「なんでマルフォイが!?」
「日記を――」ハリーが唇をかみしめる。「日記をジニーの持ち物に紛れ込ませたのは、あいつだったんだ」
胸の奥にずっと渦巻いていた疑念が、形を持って現れた気がした。
ルシウスの冷たい瞳が脳裏に浮かび、思わず腕を抱きしめる。
「……なんで、そんなこと……」
声が震えるのを抑えられなかった。
ハリーは静かに言った。
「分からない。でも……あの人は絶対に何かを企んでる」
部屋の中に重たい沈黙が落ちる。
それでも、3人は互いに顔を見合わせ、確かな絆を感じていた。
どんなに暗い闇があっても――一緒なら、必ず立ち向かえる。