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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第17章 折れた杖と残されたもの



「ミス・ウィーズリーは、すぐに医務室へ行きなさい」
ダンブルドアの声が、部屋のざわめきを一瞬で静めた。


その目はジニーを責めるどころか、深い慈しみに満ちている。


「辛い試練じゃったろう。処罰はせぬ。もっと年上の魔法使いでさえ、ヴォルデモート卿にはたぶらかされてきたのじゃからな」



ジニーが顔を上げると、ダンブルドアは目尻をやわらかく下げ、静かに微笑んだ。
「さあ、マダム・ポンフリーのところへ。熱いココアを飲めば、少しは心が軽くなるじゃろう」



その優しい声に、ジニーの肩の力が少しだけ抜けた。
モリーが娘を抱きしめ直し、アーサーも震える手で背をさすった。


「マンドレイクの薬はすでに皆に与えられた」
ダンブルドアが続けた。

「すぐに犠牲者たちも目を覚ますじゃろう」


「じゃ、ハーマイオニーは――!」
ロンが弾む声で言った。


「大丈夫じゃ」
ダンブルドアは断言した。
「後遺症は何もない」



その一言に、ロンの顔が一気に明るさを取り戻した。


(よかった……ハーマイオニー……!)


チユも胸いっぱいに息を吸い込み、涙を拭った。


モリーおばさんがジニーを抱きかかえ、アーサーと共に部屋を出ていく。
まだ動揺は隠せなかったが、その背中は、娘を守る親そのものだった。



ダンブルドアはふとマクゴナガル先生に向き直る。
「ミネルバ、これは盛大に祝宴をするに値する出来事じゃ。キッチンに知らせてくれんかの」


「わかりました」
マクゴナガル先生が毅然と答え、足早に出ていった。


部屋に残ったのは、ハリー、ロン、そしてチユ。
彼らは一様に不安そうな顔でダンブルドアを見上げる。


「わしの記憶が正しければ」
ダンブルドアは目を細めて言った。

「君たちが次に校則を破れば、退学と告げたはずじゃな?」


ロンの顔から血の気が引き、口をぱくぱくさせた。



「どうやら、わしも過ちを犯したようじゃ」
ダンブルドアはくっきりと微笑む。


「前言撤回。3人には『ホグワーツ特別労賞』を授与する。そして――1人につき200点ずつ、グリフィンドールに与えよう」


「200点!?」
ロンの顔が、一瞬で真っ赤に染まった。


けれどチユは、笑うよりも先に胸が熱くなった。

――退学ではなく、労賞。
自分たちの必死の行動が、認められた。救えた。


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