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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第17章 折れた杖と残されたもの



「それで……どうやって生きて戻ってこられたのです?」


マクゴナガル先生の問いに、ハリーは声を枯らしながらも続けた。
フォークスの出現。組分け帽子が剣を授けたこと。


そこで、ハリーは言葉を詰まらせた。
ジニーに触れることを避けてきたからだ。


チユはジニーの方を見た。
彼女は母親の肩に頭をあずけ、まだ涙をこぼしている。



ダンブルドアの青い目が、暖炉の炎を映してちらちらと揺れた。
半月の眼鏡に火の粉が跳ねるように光り、優しい微笑みが浮かぶ。


「わしが1番興味を持っておるのはのう」
その声音はやわらかかったが、奥に鋭い芯を秘めていた。


「ヴォルデモート卿が、どうやってジニーに魔法をかけたかということじゃ。わしの情報によれば、奴はいまアルバニアの森に潜んでおるらしいが……」



――あの冷たい声の主が、まだどこかに生きている。闇の森の奥で。



「な、なんですって?」
アーサー・ウィーズリーの声がうわずった。

「『例のあの人』が……?ジニーに魔法をかけただって?そ、そんな……うちのジニーが……まさか……!」


モリーおばさんはジニーを抱きしめたまま、震える声を漏らす。
「この子が……この子が、そんな……」


胸の奥がぎゅっと掴まれたように痛み、チユは思わず一歩前に出た。


「ジニーは悪くありません」
はっきりと声にした。

「ジニーはずっと、必死に抵抗していました」


ジニーが涙で濡れた顔をこちらに向けた。
驚きと、救われたような表情が混ざっている。


「この日記だったんです!」
今度はハリーが勢いよく口を挟み、机の上に黒く焦げた残骸を置いた。


「トム・リドルは16歳のときに、これを書きました」


ダンブルドアは長い指で日記をつまみ上げ、折れ曲がった背表紙とぶよぶよに膨れたページを、じっと見下ろした。



「……見事なものじゃ」
低く、しかし確信に満ちた声が響いた。

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