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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第16章 静寂の先に潜むもの




暗い通路をしばらく進むと、遠くから岩がずれる音が響いてきた。


「ロン!」ハリーは声を張った。「ジニーは無事だ!」


角を曲がると、崩れた岩のすきまからロンの顔が覗いていた。
「ジニー!」
ロンが腕を伸ばし、妹を引っ張り出す。


「生きてたのか!夢じゃないよな?いったい何があったんだ?」
ロンは抱きしめようとしたが、ジニーはしゃくりあげて顔を伏せ、兄を拒むように首を振った。


「ジニー、もう大丈夫だよ」ロンがニッコリ笑いかけた。

「あの鳥はいったいどこから来たんだ?」


フォークスがジニーのあとから、するりとすきまをくぐり抜けて現れた。
真紅の翼が闇を照らし、光の粒がきらめきながら舞い落ちる。


「ダンブルドアの鳥だよ」
ハリーが狭いすきまを通り抜けながら答えた。


ロンの視線は、ハリーの手にある剣へと吸い寄せられる。
「それに、どうして剣なんか持ってるんだ?」


バジリスクの血に染まったその剣がぎらりと光り、チユは思わず息をのんだ。――あの時、剣が閃いた瞬間を思い出し、胸の奥がじんと熱くなる。


「ここを出てから説明するよ」
ハリーはちらっとジニーの方を見やりながら言った。


「でも――」とロンが食い下がろうとした時、

「あとにして」


ハリーは急いでさえぎった。
ジニーの前で語るべきことではない、と悟っていたのだ。


「それより……ロックハートはどこ?」


「あっちだよ」
ロンはニヤリと笑い、トンネルの奥をあごでしゃくった。


「調子が悪くてね。来てみればわかる」



フォークスの広い真紅の翼が、やわらかな金色の光を通路に落としながら先導する。
その光を追い、彼らはパイプの出口まで引き返した。


そこでは――ギルデロイ・ロックハートが、鼻歌を歌いながらちょこんと座っていた。


「記憶をなくしてるんだ」ロンが肩をすくめる。
「『忘却術』を自分にかけちまった。自分が誰なのか、いまどこにいるのか、俺たちが誰なのか、ぜんぶチンプンカンプンさ。放っておくと危ないから、ここで待ってろって言ったんだ」


ロックハートは人のよさそうな顔で、きょろきょろと闇を見回した。
「やあ、なんだか変わった所だね。ここに住んでいるの?」


「いや」ロンは苦笑しながら、ちらっとハリーに目配せした。
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