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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第16章 静寂の先に潜むもの




「ハリー!!!」


チユは悲鳴をあげ、駆け寄った。
床には黒々とした血と、滴る毒が広がっていく。



リドルの影が大広間に揺れ、勝ち誇った声が響いた。
「やはり無駄だったな!バジリスクの毒に抗える者などいない!」


チユは必死にハリーの身体を抱え込み、涙声で叫んだ。
「いやよ……!絶対に死なせない!」



そのとき、フォークスが再び降り立った。
不死鳥の瞳は炎のように輝き、ハリーの傷口に透明な涙が滴り落ちる。


フォークスの涙がハリーの傷口に落ちると、じゅうっと音を立てるように赤黒い毒が薄れていった。
ハリーはかすかに息を吸い込み、顔を上げる。



「……助かった……?」


「ハリー!良かった……!」
チユは安堵で声を震わせた。だが、まだ終わっていなかった。



リドルが影のような身体を大きく広げ、2人を見下ろしていた。


「小僧……小娘……ここまで足掻くとはな。だが無駄だ!この部屋でジニーの命は削られ続けている。僕は完全に蘇る!そして2人とも、ここで死ぬのだ!」


リドルが杖を振りかざす。チユは即座に立ち上がった。


「——エクスペリアームス!」
杖から放たれた赤い光がリドルの手を弾いた。


「なに……?」リドルの顔が歪む。


「あなたなんかに……絶対負けない!」
チユは必死に叫んだ。


その言葉にリドルの顔がさらに憎々しく歪んだ。
「小娘がッ!」



影が渦を巻き、チユを飲み込もうと迫る。
その瞬間、ハリーがバジリスクの牙を握りしめ立ち上がった。



「チユ、どいて!」


「でも——!」


「いいから!」
ハリーの声に押され、チユは咄嗟に身を引く。


ハリーは残された力を振り絞り、剣を振り抜いた。
狙ったのはリドルの足元に転がっていた——黒革の日記帳。


牙が日記を貫いた瞬間、凄まじい悲鳴が室内に轟いた。
リドルの影が四方八方に引き裂かれ、光の中に飲み込まれていく。


「やめろォォォォ——!!!」



闇が砕け散る。
リドルの姿は煙のように霧散した。



リドルが霧のように薄れていくその最中——。
かすかに、けれど確かに、チユの耳にだけ届く声があった。

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