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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第16章 静寂の先に潜むもの



次の瞬間――
巨大な何かが石床に落ち、部屋全体が地震のように揺れた。
空気が凍りつき、埃が舞い上がる。


ずるっ、ずるっ……。
重くのしかかる胴体が床を擦る音。



リドルの声が鋭く響いた。
「――殺せ!」


チユの全身が硬直した。
巨大な影が這い寄り、息を殺すだけで精一杯だ。


(いや……いやだ、怖い……!)


だがすぐ横で、ハリーが必死に逃げようと石壁に手を這わせる姿を見て、チユの喉から声が飛び出した。


「こっち!ハリー、こっちよ!」


リドルの笑い声が闇を揺らす。
バジリスクの胴体が迫り、チユは震える足を必死に動かし、ハリーの手を引いた。


胸の奥で叫びながら、杖を握りしめる。


「インセンディオ!」


杖先から閃光が弾け、蛇の前に一瞬の炎が広がった。
盲いた蛇は怒り狂ったように頭を振り、リドルが鋭く命じる。


「小僧と、そこの小娘を仕留めろ!」


チユの背筋が凍りついた。
だが次の瞬間、石床を激しく叩く尾の衝撃で、2人はよろめきながらも転がるように逃げる。


「プロテゴ!」
必死に叫んだが、防御の膜は衝撃で弾け飛んだ。
「っ……!」


バジリスクの鎌首がのしかかるように迫る。
チユは必死で別の呪文を放つ。


「コンフリンゴ!」


炎の閃光が蛇の胴に炸裂し、鱗を焦がす。
しかし怪物は怯むどころか、ますます怒り狂った。


その時、フォークスが急降下し、鋭い嘴を蛇の眼窩に突き刺す。
黒い血がどす黒く飛び散り、バジリスクが咆哮を上げてのたうち回った。


「……やった……!でも、まだ……!」
チユの息は荒く、全身が震えている。


盲目となった蛇が、混乱しながらも匂いを頼りに迫ってくる。
リドルの命令が鋭く飛ぶ。


「目は潰された!だが臭いがある!逃がすな!」



バジリスクの尾が一閃し、床を薙ぎ払った。
「プロテゴ!」



チユは咄嗟に防御を張り、ハリーの身体を庇った。
衝撃で全身が痺れ、口の中に血の味が広がる。


それでも、杖を離さなかった。

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