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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第16章 静寂の先に潜むもの



リドルの顔がぴくりと歪んだ。
だがすぐに、無理やり作り出したようなぞっとする笑みを貼りつけた。


「そうか。母親が君を救うために死んだ……なるほど、それは僕にとって強力な障害だったのだろう。だが――わかったぞ」



リドルの声が冷たく響く。


「結局、君自身には特別なものは何もない。僕はずっと何か特別な力があるのかと思っていたが……違った。君が生き延びたのは、ただの偶然、ただの幸運だ」



チユは震える手を握りしめた。
偶然?幸運?それだけで、ここまで生きてきたとでも?心の奥から言葉がこみ上げる。


「……それでも、ハリーは生きてる」



思わず声に出していた。
リドルの冷たい視線がチユに突き刺さる。それでも視線を逸らさなかった。



「生き延びて、ここに立って、あなたと向き合ってる。それが偶然だけでできると……本当に思ってるの?」



リドルの目が細くなり、広間の空気がさらに張りつめた。


「さて、ハリー」
声は冷酷に響く。


「少し楽しもうじゃないか。サラザール・スリザリンの継承者、ヴォルデモート卿の力を見せてやろう。対するは、ダンブルドアから与えられた“歌い鳥”と古帽子を武器にした、かの有名なハリー・ポッターだ」


あざけるようにフォークスと組分け帽子を一瞥し、リドルは悠々と歩き出す。


ハリーは足に力が入らず、ただ恐怖を必死に押し殺して見つめていた。
チユもまた、背中に冷たい汗が流れていくのを感じながら、その一歩一歩に息を詰めていた。


リドルは高い柱の間で立ち止まり、半分闇に覆われたスリザリンの巨大な像を見上げる。
そして口元を大きく開くと、低く不気味なシューシューという音が漏れ出した。


――蛇語だ。


「スリザリンよ」
リドルの声は冷たく石壁に反響する。


「4強のうち最強の魔法使いよ。今こそ語れ……僕の命令に従え」


石像の口がぎしぎしと広がり、暗黒の穴がぽっかりと現れる。
その奥で、何かがずるずると這い出してくる音がした。


チユの心臓は耳を裂くほどに鳴り響いていた。
(でてくる……!きっと、バジリスクだ……!)


「ハリー!」
思わず彼の袖を掴んだ。


「目を開けないで……絶対に!」


ハリーはうなずくと、壁際まで後ずさり、目をぎゅっと閉じた。
フォークスが飛び立ち、羽ばたきがチユの頬をかすめる。
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