第2章 秘密の夏休み
「バパ、何かおもしろいもの見つけた?」とフレッド。
「私が挑収したのはせいぜい、縮む鍵が数個と、噛み付くやかんが1個だけだった」
「鍵なんか縮むようにして、なんになるの?」ジョージが聞いた。
「いざ使うときには縮んで見つからないって寸法さ。マグルをからかうにはちょうどいい、ってね……まったく、悪質なことを考えるもんだ。マグルは、鍵が縮んだなんて信じないからね。どれだけ魔法を突きつけても、かたくなに認めようとしない。だがね……我々、魔法使いの呪文のかかったものときたら、まったく途方もないものばかりで……」
「たとえば、車なんか?」
声がして振り返ると、モリーおばさんがふきんを手にしながら台所へ入ってきた。
アーサーおじさんの目がぱっちりと開いた。
モリーおばさんを見つめるその表情には、明らかにバツの悪さがにじんでいる。
「も、モリー……母さんや。く、車とは?」
「ええ、アーサー。その車です」
おばさんの声は冷たく、目は怒りで爛々と輝いていた。
「ある魔法使いが、さびついたオンボロ車を買ってきて、奥さんには“仕組みを調べるために分解する”なんて言っていた。でも実際には、こっそり呪文をかけて、車が空を飛べるようにした――そんな話をご存知でしょう?」
アーサーおじさんは目をパチパチしばたたき、どこか言い訳を探すように口を開いた。
「ねぇ、母さん。わかってもらえると思うが、それをやった人は……その、法律の許す範囲で、やっていたんじゃないかな……法律ってのはご存知のとおり、抜け道があるものだし……その車が飛ぶ能力を持っていたとしても、実際に飛ばさなければ、つまり――」
「アーサー・ウィーズリー!」
モリーおばさんの声が台所中に響いた。鋭くて、どこか母親特有の怒りのこもった声。
「あなたがその法律を作ったときに、わざと抜け道を書き込んだんでしょう!自分の納屋に山ほどため込んだマグルのがらくたをいじくり回したいから、そうしたんでしょう!」
その一言一言に、アーサーおじさんの肩がしゅん、と小さくなっていく。
「申し上げますがね、ハリーが今朝到着しましたよ?あなたが“飛ばすつもりはない”とおっしゃっていた、あの車に乗って!」