第16章 静寂の先に潜むもの
リドルの笑みが消え、空気が張りつめる。
チユは思わず小さく身をすくめながらも、必死にハリーを見守った。
「君をがっかりさせて気の毒だけど――世界1偉大な魔法使いはアルバス・ダンブルドアだ。みんながそう言っている」
ハリーの言葉は熱を帯び、震えながらも力強い。
「君がどんなに強大だったときでさえ、ホグワーツを乗っ取ることはできなかった。手出しすらできなかった。ダンブルドアは、君が在学中から君のことを見抜いていたし、今だって……君はダンブルドアを恐れている!」
「……!」
リドルの表情が歪み、笑みが凍りついた。美しかった顔が、次第に醜悪なものへと変わってゆく。
「ダンブルドアは――」リドルの声が低く響いた。
「単なる記憶にすぎないこの僕によって、追放され、この城から消えたのだ!」
チユは息をのんだ。リドルの言葉は恐ろしいほどの自信に満ち、心をえぐる。
だが、ハリーは怯まなかった。
「……ダンブルドアは、君の思っているほど遠くには行ってない!」
ハリーの声が石の壁に反響し、広間に鋭く響きわたる。
それはリドルを怖がらせるために、とっさに口をついた言葉。
確信よりも、願いに近いものだった。
それでも、チユの胸に灯った。
小さくとも消えない希望の火のように。
「……そうだよ。ダンブルドア先生は、まだ……わたしたちを見てる」
チユは唇を震わせながら、必死に言葉をつないだ。
自分に言い聞かせるように、そしてリドルに抗うように。
リドルの赤い瞳がチユに向けられる。
その眼差しは、ぞっとするほど冷たい。