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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第16章 静寂の先に潜むもの




「…………ん?」


チユの口から間の抜けた声が漏れた。ぽかんとした顔で光の文字を見上げ、首をかしげる。
「えっと……これって、暗号……?あの、わたし、暗号とか本っ当に苦手で……」


本気で分かっていないらしい。
ハリーが思わず顔を引きつらせる。

「チユ、冗談言ってる場合じゃない!」



「だって、文字を並べ替えただけじゃない……?え、えーっと、つまり」



リドルの目が細くなり、冷たい笑いが洩れる。
「理解できぬ者は、ただ恐れるしかないのさ」



その声の調子に、ぞわりと背筋が凍る。



「僕はマグルの父の名を捨て、スリザリンの血にふさわしい新しい名を選んだ。ある日必ずや、誰もがその名を恐れて口にすることになると知っていた――僕が世界で最も偉大な魔法使いになる、その日が来ることを」



チユは凍りついたように立ち尽くした。

さっきまで「暗号ごっこ」だと軽く見ていたものが、一瞬で恐ろしい現実へと姿を変えてゆく。



「……そ、そんな……嘘だよ……あなたが本当にあのヴォルデモートなの…?」


唇が震え、声がかすれる。
だが、リドルの瞳の奥で妖しく揺れる赤い光が、否応なく真実を告げていた。


ハリーは拳を固く握りしめ、リドルを睨み据える。
チユもまた、怖さに押し潰されそうになりながら、それでも彼の隣に立ち続けた。


恐ろしかった。


――まさか、目の前に立つこの少年が、あの名を聞くだけで誰もが震えあがる「ヴォルデモート」なのかと。
チユの心臓は胸を突き破りそうなほど激しく脈打ち、手のひらは冷たく汗ばんでいた。


沈黙を切り裂いたのは、隣に立つハリーの声だった。
「……ちがうな」


低く静かな声に、万感の憎しみが込められていた。
「何が?」リドルの瞳が怪しく光る。


ハリーは一歩踏み出し、荒い息を吐きながら言い放った。
「君は世界1偉大な魔法使いなんかじゃない!」


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