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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第16章 静寂の先に潜むもの



「しかし、たった1人、変身術のダンブルドア先生だけが、ハグリッドは無実だと考えたらしい。ハグリッドを学校に残し、家畜番、森番として訓練するようにディペットを説得した。ほかの先生方は僕のことをお気に入りにしていたけど、ダンブルドアだけは違ったようだ」


チユは、声の端に冷たく含まれた静かな怒りを感じ取った。


小さな声でハリーがつぶやく。
「きっとダンブルドアは、君のことをとっくに見抜いていたんだ」


リドルはそれに軽く頷いた。
「ハグリッドが退学になってから、確かにダンブルドアは僕を注意深く監視するようになった」


チユは一瞬、リドルの目に吸い込まれそうな感覚を覚えた。

その瞳には、単なる過去の回想ではなく、計算と策略が隠されている。
息が自然に詰まるような緊張に、体が硬直する。



「僕の在学中に『秘密の部屋』を開けるのは危険だとわかっていた。でも、無駄に年月を費やすつもりはなかった。日記を残し、16歳の自分をその中に閉じ込め、いつか誰かに僕の足跡を追わせるためだ。サラザール・スリザリンの、崇高な仕事を成し遂げるために」


ハリーが息を呑む。
「でも、君はそれを成し遂げてはいないじゃないか」


「今回は誰も死んでいない。あと数時間でマンドレイク薬は完成し、石になった者たちは元に戻る」リドルは静かに言葉を落とした。


「『穢れた血』をどうにかすることは、もはや僕の関心事ではない。数か月間の新しい目標――それは君だ」


リドルの瞳がハリーを捕らえた時、チユの心臓が跳ねた。



「そしてしばらくして、僕の日記にまた書き込んだのは、君ではなくジニーだった」リドルの声には苛立ちと計算が混ざる。


「ジニーは、君が日記の使い方を知ったらどうなるか、パニックになった。君に彼女の秘密をすべて知られるかもしれない――鶏をしめ殺した犯人までばれるかもしれない。だから僕は、君たちの寝室に誰もいないタイミングを見計らい、日記を取り戻しに行った。しかし、僕にはわかっていた。君なら、この謎を追い、解き明かすだろうと」


チユは思わず肩を震わせる。


「それに――君が蛇語を話すことで、学校中が騒ぎになっていることも、ジニーが教えてくれた」

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