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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第16章 静寂の先に潜むもの



「どうして僕に会いたかったんだ?」

ハリーの声が震えた。
怒りと困惑が絡まり、声を落ち着けることすらできない。


チユはその隣で、無意識に手を握りしめる。


リドルはハリーをじっと見つめ、眉間の稲妻形の傷を舌先でなぞるような視線を送った。


「そうだな――ジニーが、君のことを色々教えてくれたからだよ。君の素晴らしい経歴をね」


リドルの視線が一瞬チユに向いた。


「チユ、君の事も日記に書かれていたよ。ジニーは君のことを、とても優しくて可愛い、お人形さんみたいだって――本当にその通りだね」


チユの心臓がぎゅっと掴まれる。


思わず肩が震え、胸が熱くなる。
ジニーがそんな風に自分を見ていてくれたなんて――。


こんな状況なのに頬をぽっと染めてしまい、思わず小さく笑いそうになった。
ハリーの前でこんな姿を見せるなんて、ちょっと情けないと思いながらも、心の奥底で少しだけ嬉しかった。


リドルは口角をわずかに吊り上げ、悪戯めいた光を目に宿す。


「ハリー、君のことを、もっと知る必要がある――会って話をしなければならないと、僕はずっと思っていた。だから君を信用させるために……あのハグリッドの有名な一件を見せたんだ」



「…ハグリッドは……僕たちの友達だ」ハリーの声は小さく震え、怒りと恐怖が入り混じっていた。


「それなのに、君はハグリッドをはめた……だろう?僕は、君がただ勘違いしただけだと思っていたのに」


リドルの声が高く響き、冷たい笑いが部屋を満たす。


「ハリー、君は僕の言うことを信じるか、ハグリッドを信じるか、どちらか1つだったんだよ。想像してみなさい、孤児で貧しい僕と、問題ばかり起こす巨大なハグリッドのどちらを大人は評価するだろうか?」


チユは息を飲んだ。
リドルの言葉は、単なる挑発ではなく、冷徹な計算が見え隠れしていた。

背筋が凍るほどの緊張感に、羽根が思わず縮みそうになる。
しかし、彼女はその恐怖を無理に押し殺し、ハリーに視線を戻した。

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