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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第16章 静寂の先に潜むもの



「まさか……そんな……」
ハリーの声が震える。


チユはハリーの肩に手を置き、必死に気持ちを落ち着けようとする。



リドルの瞳が2人を交互に見つめ、低く微笑む。

「ただし、彼女は最初、自分の行動をまったく自覚していなかった。だから――なかなか興味深かったんだ。日記に何を書き始めたか――君たちに、これから教えてあげよう」



恐怖と罪悪感の波に押しつぶされそうになりながらも、ハリーの存在が、ほんのわずかに心の支えになっていた。



リドルの声が空気を支配する。
「『親愛なるトム――』」


チユは肩越しにハリーを見る。
彼の目が大きく見開かれ、息を呑んでいるのが伝わった。


『あたし、記憶喪失みたい。ローブが羽だらけなのに、どうしてそうなったのかわからない……ねえ、トム、ハロウィーンの夜、自分が何をしたか覚えてないの。でも、猫が襲われて、ペンキがべっとり……パーシーも、様子がおかしいって言うの。今日もまた一人襲われたのに、自分がどこにいたか覚えてないの。トム、どうしたら……私、どうかしちゃったの?きっとみんなを襲ってるのは、あたし……』


チユは息を詰めた。ジニーの文章から、無力感と恐怖がそのまま伝わってくる。
怒りと悲しみが混ざり合い、胸が押しつぶされそうだ。



リドルはゆったりと笑う。


「バカなジニーの子が、自分でおかしいと気づくまでには時間がかかった。しかし、とうとう疑い始め、日記を捨てようとした。そこに君たちが登場したのさ――君が日記を手にした瞬間、僕は心底喜んだ。ついに、ハリーが現れたのだから」


リドルの瞳が、2人を交互に捕らえ、冷たい好奇心が光る。

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