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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第16章 静寂の先に潜むもの



チユの心臓ざわめく。
恐怖が全身を駆け巡るが、それでも立ちすくんではいられない。



チユは一歩前に出て、リドルを睨みつける。



「やめて!ジニーはあなたの遊び道具じゃない!」チユの声は震えながらも、確固たる決意が込められていた。


リドルは薄く笑った。


「君は勇敢だね……。だが彼女は、自ら心を差し出したのだよ。日記に秘密を打ち明け、弱さを吐き出し、私にすべてを委ねた。――君も分かるだろう?“秘密を抱えて生きる“苦しみを」



リドルの言葉は、まるで鋭い矢のようにチユの胸を貫いた。
心臓がぎゅっと掴まれるような感覚に襲われる。


確かに、秘密を抱えながら生きる辛さ――誰かに理解してほしい、受け止めてほしいという気持ちは、彼女にもよくわかる。

他人に知られたら軽蔑され、怖がられるかもしれない。
その恐怖と孤独は、今この瞬間のリドルの目に見透かされているかのようだった。



瞳が、冷たい光を帯びてチユを見つめる。



「ほら、君も僕に打ち明けてみるかい?隠しているもの――すべてを」


チユは体がこわばるのを感じ、思わず後ずさった。
心の奥の扉を叩かれ、胸の中で何かが締め付けられる。

声を出すこともできず、ただ握った杖の冷たさに頼る。



ハリーがそっとチユの手を握り、低く囁く。
「大丈夫、チユ……僕がいる」



チユはその声に、一瞬だけ心を落ち着けた。
しかし、リドルの瞳の奥に潜む好奇心と狡猾さを見て、再び胸が締め付けられる。


「自分で言うのも妙だが、僕は必要なら誰でも引きつけられる。だからジニーは僕に心を打ち明け、自分の魂を注ぎ込んだんだ」


リドルの声は柔らかいが、言葉の重さは凶器のようだ。


「ジニーの心の深い恐れや秘密を糧に、僕はだんだん強くなった。充分に力が満ちたとき、僕はほんの少しだけ、彼女に自分を分け与えた――まるで毒を少しずつ注ぎ込むようにね」


チユの胸は波打つ。
恐怖と怒り、そして漠然とした罪悪感が混ざる。


リドルは静かに首を傾げ、低く囁いた。


「まだわからないのかい?ハリーいや、君も、チユもだ。ジニーは『秘密の部屋』を開けた。学校の雄鶏を殺したのも、壁に脅迫の文字を書きなぐったのも、すべて、彼女だ」


チユの呼吸が止まりかける。
羽根が背中でひそかに広がり、恐怖と戦おうとする心を支えた。
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