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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第16章 静寂の先に潜むもの




「普通の人間ではないな。背中に隠している“もの”も……私には見える」


チユはびくりと肩を揺らし、思わず背中に手を当てた。
——バレてる。羽根のこと……!


ハリーが一歩前に出て、リドルの視線を遮った。
「やめろ!彼女は関係ない!」


リドルは口元をさらに吊り上げ、楽しげに囁く。
「関係なくはないさ。君も、あの娘も……“特別”だ。だからこそ、ここに呼ばれた」


チユは必死に恐怖を抑え、ハリーの袖をぎゅっと掴んだ。
震えそうになる指先に力を込めながら、声を振り絞る。


「私たちはジニーを助けに来たの。あなたの遊びに付き合うつもりなんて、ない」


リドルの瞳が冷たい笑みを帯びる。
「なるほど。だが、君たちはまだ知らない……どちらが“遊ばれている”のかをね」


ハリーはぎゅっとジニーの肩を抱き、顔をのぞき込む。
目は閉じられ、肌は冷たく、まるで時間が止まったかのようだった。


チユもすぐ隣に立ち、ハリーの袖を握りながら、全身の神経を研ぎ澄ませていた。


「トム……ジニーは……どうしてこんなふうになったんだ?」ハリーの声は震えていた。


リドルは楽しげに微笑んだまま、ゆっくりと一歩前に出る。
薄暗い部屋の光が、彼の姿を浮かび上がらせ、どこか不気味な静けさを放った。


「それはおもしろい質問だね」リドルの声は甘く、しかしどこか冷たく響いた。

「話せば長くなるよ。ジニー・ウィーズリーが、こんなふうになった本当の理由は……誰も知らない、目に見えない誰かに心を開き、自分の秘密をすべて打ち明けてしまったことだ」


チユは息をのみ、背中の羽根をぎゅっと押さえた。
胸がざわつき、指先が震える。



「……どういう意味?」チユは声を振り絞って言った。
恐怖と怒りが混じり合い、声が少し高く震える。


リドルの目がチユとハリーの両方を行き来する。


「あの日記は、僕のものだ。ジニーというおチビさんは、何か月も何か月も、その日記に小さな悩みや心配事を書き続けた。兄たちにからかわれること、古いお下がりの本やローブを着なければならないこと、そして――」


リドルの瞳がきらりと光る。


「有名なハリー・ポッターが、自分のことを好くわけがない……そんな不安や恐れをね」


チユは小さく息をつき、ハリーの手を握り直した。
恐怖と怒りが入り混じり、息が苦しくなる。
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