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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第15章 秘密の部屋



「な……」チユは息を飲んだ。


「私はこの抜け殻を持ち帰り、『女の子を救うには遅すぎた』と語ろう。君たちはここで精神に異常をきたした、とね!さあ――記憶に別れを告げるがいい!」


ロックハートが杖を振りかざした。


「オブリビエイト!」


瞬間――爆音。
杖が逆流し、まるで小型爆弾のように炸裂した。

轟音とともに天井の岩が崩れ落ちる。


「ひゃあっ!」チユはとっさに蛇の抜け殻に飛び込み、ずるりと滑りながら岩を避けた。
湿った皮が背中に張り付いて気持ち悪く、思わず「いやぁぁ!」と声が漏れる。


振り返ると、崩落した岩が壁のように立ちはだかり――チユとハリーは片側に取り残されていた。


「ロン!」ハリーが叫ぶ。
「大丈夫か!」


「こっちは平気だ!でもこのバカは完全にやられた!」
向こう側からロンの声。続いて「ドンッ!」という音。


「アイタァ!」ロックハートの悲鳴が響く。


「どうするんだ?」ロンの困り果てた声が岩越しに響く。
「こっちから掘り進めるには何年もかかりそうだぞ!」


「そこで待ってて」ハリーが応じた。
「僕とチユが先に行く。1時間経って戻らなかったら――」


「ハリー!」ロンが遮った。「僕も――」


「ロン」チユは壁越しに呼びかけ、言葉を探した。
「……信じて。わたしたちが、必ずジニーを連れて戻るから」



沈黙があった。やがて、向こう側で岩を必死にどかすような音が響いた。



「戻る道を作っておく。……だから絶対だぞ!」ロンの声は震えていた。

「うん、絶対」チユは強く頷き、震える声を押し殺した。


2人はとぐろを巻いた抜け殻を踏み越え、奥へ進む。
トンネルはくねくねと曲がり、冷たい空気が肌を刺す。


「……チユ」歩きながら、ハリーが低く言った。
「怖い?」


「……当たり前だよ」チユは小さく笑った。
「でもね……ここで逃げたら、ダサいでしょ」


その言葉に、ハリーは思わず口元をほころばせ、緊張がわずかにほぐれた。


やがて、トンネルの先に巨大な扉が現れる。
2匹の蛇が絡み合った模様――その瞳には大きなエメラルドが嵌め込まれていた。

ハリーがまた、低く噛かなシューシューという音を出すと
壁が2つに裂け、からみ合っていた蛇が分かれ、両側の壁が、するするとすべるように見えなくなった。

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