第15章 秘密の部屋
次に音を破ったのは――ロンが踏みつけた乾いた「バリン」という音だった。
光を近づけて見れば、それは小さな動物の頭蓋骨。さらに周囲には無数の白い骨が散乱していた。
チユの喉がぎゅっと詰まり、足が止まりそうになる。
(ジニーも……こんな骨と同じように……)
必死でその想像を振り払い、足を進めた。
曲がり角を抜けたそのとき。
「チユ……!あそこ……!」ロンが声を絞り出し、チユの腕を強く掴んだ。
前方――暗闇を塞ぐように、巨大な曲線を描くものが横たわっている。
輪郭だけがかろうじて浮かび上がる。まるで岩のように動かないそれは、しかし確かに――生き物の気配を帯びていた。
「……眠ってるのかもしれない」ハリーが囁き、息を殺す。
ロックハートはすでに目を覆って縮こまり、チユは杖を握る手に力を込めた。
心臓は耳をつんざくほどの音を立てていた。
(これが……秘密の部屋に棲む怪物……)
ゆっくりと、ぎりぎり物が見える程度に目を細めながら、ハリーは杖を高く掲げ、前方へじりじりと近づいた。
光に浮かび上がったのは――巨大な蛇の抜け殻だった。
鮮やかな緑の皮がぬらりと光り、トンネルの床にとぐろを巻いて横たわっている。
その長さは6メートルをゆうに超えているように見えた。
「うっそだろ……」ロンが力なく呟いた。
チユは喉がからからに乾き、思わず声を上げそうになったが、唇を噛んで堪えた。
(これ……生きてたらどんな大きさなの……?こんなのと戦えるのだろうか……)
そのとき――後ろでドサリと何かが倒れる音。
「ひぃっ!」ロックハートが腰を抜かし、へたり込んでいた。
「立て!」ロンが苛立ちを隠さず杖を向ける。
しかし次の瞬間、ロックハートはロンに飛びかかり、床に押し倒した。
「ロン!」チユは反射的に叫び、駆け寄った。
だが間に合わない。
ロンの杖をもぎ取ったロックハートは、いつものにやけた笑みを取り戻し、杖を高く掲げた。
「坊やたち――お遊びはここまでだ!」
「な……」チユは息を飲んだ。