第15章 秘密の部屋
ロックハートが杖を振り上げたその瞬間、チユは唱えた。
「エクスペリアームス!」
彼女の杖先から光がほとばしり、ロックハートの杖が空高く弧を描いて飛んでいく。
「うわっ――!」ロックハートはトランクに足を取られ、背中からひっくり返った。杖は宙を回り、ロンが見事にキャッチして窓の外へ放り投げる。
「スネイプ先生にこの呪文を教わったのが、失敗でしたね」ハリーが冷たく言った。
チユは息を荒げながら、それでも胸を張って答えた。
「……教わらなくても、使えてましたけどね」
ロックハートは地に這いつくばり、弱々しい目で3人を見上げた。
かつての自信に満ちた笑顔は消え、ただの卑小な男の姿しかそこになかった。
「私に……いったい何をしろと言うんだね?」震える声で彼は言った。
「『秘密の部屋』の場所も知らない……私には、何もできない……」
「運のいい人だよ」ハリーは低く言い、杖を突きつけたまま立たせた。
チユはその横で、迷いなく杖を振り上げた。
「インカーセラス!」
ロープが音を立てて現れ、ロックハートの両腕をぎゅっと縛り上げた。
彼は情けなくもがいたが、もう抵抗の余地はなかった。
「僕たちはそのありかを知っていると思う。その上、中に何がいるかもね。さあ、行こう」
ロックハートを追い立てるようにして部屋を出て、1番近い階段を下り、例の壁の文字が闇の中に光る暗い廊下を通る。
3人は嘆きのマートルの女子トイレの入口にたどり着いた。