• テキストサイズ

ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第15章 秘密の部屋



「『闇の魔術に対する防衛術』の先生じゃありませんか!」ハリーが声を張り上げた。

「こんな時に逃げ出すなんて、おかしいでしょう!ここで闇の魔術が起きているんですよ!」


「いや、しかしですね……」ロックハートはソックスの山をローブの上に押し込みながら、しどろもどろに言った。


「職務内容には、こんなことは……予想だにしておりませんで……」



「先生、逃げるつもりなんですか?」ハリーが詰め寄る。
「ご自分の本で、あんなにたくさんの怪物を倒したって書いてたじゃないですか!」


「本は……誤解を招くものです」ロックハートは苦々しげに言った。



チユは思わず一歩前へ出て、小さな声で尋ねた。
「……じゃあ、先生がやったことじゃ、ないの?」



ロックハートは彼女を見ようともせず、わざとらしく肩をすくめた。

「まあまあ、お嬢さん。本には真実もある。けれど、それを成し遂げたのは――私じゃない。ほかの者たちです」


「……!」チユは目を見開いた。胸がひどくざわめく。
あれほど堂々と語っていた英雄譚が、ただの盗み物だったなんて――。



ロックハートは続けた。


「私は彼らの話を聞き出し、それをどう退治したかを学ぶ。そして『忘却術』で記憶を消す。そうすれば、彼らは自分の手柄を忘れ、代わりに私の名が残る。……自慢できるとすれば、完璧な『忘却術』くらいですね」



ロンが顔を真っ赤にした。
「卑怯だ!そんなの――」


だがロックハートは意に介さず、最後のトランクをバチンと閉め、鍵をかけた。
「さて、荷物はそろった。残るは1つだけ」


彼は杖を抜き、3人に向けた。


「坊やたち、いや――お嬢さんも。気の毒ですが、『忘却術』をかけさせてもらいます。私の秘密が漏れては困る。そうなれば、本が1冊も売れなくなりますからね」

/ 300ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp