第15章 秘密の部屋
「……そうだ!」ロンが立ち上がった。
「ロックハートに会いに行こう!あいつは“部屋の場所を知ってる”なんて吹聴してたんだ。僕たちが気づいたことを話せば――きっと……」
ほかに方法も思いつかなかった。
ただ、じっとしていることに耐えられず、ハリーとチユもロンの後を追った。
談話室のグリフィンドール生たちは、皆うなだれていた。
誰も止めはしなかった。
3人が出ていく姿を、ただ重苦しい沈黙で見送った。
ロックハートの部屋の前に立つ頃には、廊下は闇に沈んでいた。
中からはカリカリという音、ガタガタと物を動かす音が響いてくる。
ハリーがノックすると、音がぴたりと止まった。
しばらくして、ほんのわずかにドアが開き、ロックハートの目がのぞいた。
「あぁ……ポッター君、ウィーズリー君……それクローバー嬢……」
にやけた声が、どこか裏返っている。
「先生、僕たち、お知らせしたいことがあるんです」
ハリーが切り出す。
「先生のお役に立つことだと思います」
「い、いやぁ……ただいま少々取り込み中でしてね……」
ロックハートはなおも渋っていたが、結局は観念したのか、いやいやドアを開けた。
部屋の中は混乱の真っただ中だった。
床にはトランクが2つ、1つにはローブが無造作に押し込まれ、もう1つには本や写真立てがごちゃまぜに放り込まれている。
壁いっぱいに飾られていた自分の写真は外され、段ボールに乱雑に突っ込まれていた。
「……どこかへ行かれるんですか?」ハリーが問いかける。
「ええ、まあ……緊急の呼び出しがありましてね。どうしても出向かねば……」
ロックハートは等身大の自分のポスターをはぎ取りながら答えた。
「僕の妹はどうなるんですか?」
ロンが愕然とした声で言った。
ロックハートはロンの方を見なかった。
「いやぁ、まことにお気の毒ですな……」
引き出しを乱暴に開けては、中身を鷲づかみにしてトランクへ放り込んでいく。
「……なるほど」チユが低く言った。
「“英雄”ギルデロイ・ロックハート様は、まず自分の命から守るってわけなの」
ロックハートの手が震え、ポスターを丸める音が不自然に響いた。