第15章 秘密の部屋
その日は、チユにとって、胸が張り裂けそうなほど長い1日だった。
グリフィンドールの談話室の隅に、ハリーとロン、チユ、そしてフレッドとジョージが肩を寄せ合って座っていた。
パーシーの姿はなかった。
両親へふくろう便を飛ばしたあと、自室に閉じこもってしまったのだ。
午後は信じられないほど遅く過ぎ、いつもはざわめく談話室も、まるで時間が止まったかのように静まり返っていた。
火のぱちぱちという音さえ、重苦しい沈黙を破るのがためらわしいほどだった。
やがて日が傾き、耐えきれなくなったフレッドとジョージが同時に立ち上がった。
「……なあ、座ってても余計に気が滅入るだけだ」ジョージが低く言った。
「どうせ眠れやしない。上で、せめて――」
「荷物でも投げ飛ばすか」フレッドが続けたが、その声音は笑いとは程遠かった。
2人の落ち込んだ背中を見送りながら、チユは胸の奥が締めつけられる思いがした。
普段ならふざけてばかりの2人の沈痛な顔が、言葉以上に状況の重さを突きつけてきた。
「ジニーは何か知っていたんだ」
職員室の洋服かけに隠れて以来、初めてロンが口を開いた。声はかすれていた。
「だから……連れて行かれたんだ。パーシーのくだらない秘密なんかじゃない。『秘密の部屋』のことを知ってしまったんだ。そうに決まってる」
ロンは激しく目をこすり、顔をそむけた。
「だって……ジニーは純血だ。理由はそれしかない……」
チユはそっとロンを見つめた。
――きっとジニーは生きてる。怖くて、震えて……今も暗い場所で助けを待ってる。
だから、早く……。
「ハリー……」ロンが縋るように言った。
「ほんのわずかでも可能性があるだろ?ジニーが、まだ――」
ハリーは答えを探すように口を開きかけて、閉じた。
言葉にできない沈黙が流れた。
代わりにチユが小さく、しかしはっきりと声を出した。
「……生きてるよ。ジニーはきっと怖がってる。だから…はやく助けてあげなきゃ」
ロンがはっとしてチユを見た。
その瞳ににじんだ涙は、希望と痛みが混じっていた。