第2章 秘密の夏休み
あくびを噛み殺しながら、ぶつぶつ文句を言いつつ、ウィーズリー3兄弟は気乗りしない様子でだらだらと外に出て行った。
チユとハリーもそのあとに続く。
広々とした庭には雑草が生い茂り、芝生は伸び放題だった。
リーマスと暮らす家の、きちんと手入れされた静かな庭とはまるで違って、チユは目をぱちぱちとさせた。
「マグルの庭にも、飾り用の小人が置いてあるの知ってるだろ?」
ハリーが芝生を横切りながらチユとロンに話しかける。
「見たことある」チユは小さくうなずいた。「でも、動いたりはしないよね?」
「ああ、マグルが庭小人だと思ってるやつな。妙に太ったサンタが釣り竿持ってるみたいなヤツだ」
ロンは腰を曲げて芍薬の茂みに首を突っ込みながら言った。
そのとき――
「これぞ……」ロンが身を起こしながら、重々しく言った。「ほんとの庭小人なのだ!」
ロンの腕の中で暴れているのは、チユが今まで見たこともないような生き物だった。
小さくて、ごわごわしていて、ジャガイモみたいにデコボコした大きなハゲ頭。鋭い目でロンを睨みつけながら、硬い足でジタバタと蹴りを入れている。
「ひっ……!」
チユは思わず息を呑んだ。知識として存在は知っていても、こうして動いて喚く現物を見るのは初めてだった。
「放せ! 放せ!」
小人はキーキーと甲高い声でわめき続ける。
ロンはそんな小人をひょいと持ち上げ、両足首をがっしり掴むと、くるくると投げ縄のように振り回し始めた。
「ちょ、ちょっと! な、なにしてるの!?」
チユが声を上げた。
「大丈夫、大丈夫、傷つけてるわけじゃないって。ただ、こうやって目を回させて、自分の巣に戻れないようにするだけさ」
ロンがそう言うなり、タイミングよく手を放す。
小人はきれいな弧を描いて、5、6メートル先の木の根元にドサッと落ちた。
「おいおい、それっぽっちかよ」フレッドが口を尖らせた。
「俺なんか前、あの切り株の先まで飛ばしたからな」
「じゃあ今日はその記録を更新してくれよな、フレディちゃん」ジョージがニヤリ。
「ほら、チユ、空飛ぶ小人が見られるぜ。サーカス顔負けの大乱舞!」
2人は庭小人を捕まえると、さっそく勝負でも始めるかのように投げ始めた。
ハリーも少し戸惑いながらも加わり、たちまち空には回転しながら飛ぶ庭小人が舞い上がった。
