第2章 秘密の夏休み
朝食を終えると、フレッドが大きく伸びをして、フォークをカチャリと置いた。
「ふぅ、なんだか疲れたぜ。僕、ベッドに行って……」
「行きません」
モリーおばさんの鋭い声が飛んできた。
「夜中に勝手に出かけたんですから、自業自得です。さっさと庭に出て、庭小人を駆除なさい。またぞろ増えて、手に負えなくなってますから」
「ママ、そんな……僕たち、まだ夜明け前に帰ってきたばかりだよ……」
ジョージが情けない声を出す。
「あなたもよ、ロン!」
モリーおばさんはロンにも容赦なく鋭い視線を向けた。
「チユとハリーは、上に行って少し休みなさい。まだ疲れてるでしょう?」
「ぼ、僕、手伝いをします! 庭小人の駆除、見たことありませんし……!」
ハリーが慌てて言った。
「私も、手伝います。役に立てるかわからないけど……」
チユも急いでそう言って、立ち上がった。
モリーおばさんは一瞬驚いたように2人を見て、それからふわっと微笑んだ。
「まあ、なんて優しい子たちなの」
モリーおばさんは、暖炉の上の本の山に手を伸ばし、分厚い一冊を引っ張り出してきた。
「さてと、ロックハートがどんなことを書いているのか、読んでおこうかしら」
そう言って本をパラパラとめくりはじめる。
「ママ、僕たち庭小人の駆除ぐらい、100年やってるよ……」
ジョージがうめくように言った。
「じゃあ、その100年分の成果を今日見せてもらいましょうね!」
チユはそっと本の背表紙に目をやり、そこに金の大きな文字で書かれた書名を読み取った。
『ギルデロイ・ロックハートのガイドブック一般家庭の害虫』
「ああ、彼って本当に素晴らしいのよ。家庭の害虫についてとても詳しくて…」
モリーおばさんがうっとりとした声で呟いた。
「ママったら、ロックハートに夢中なんだよ」
フレッドが、わざとらしく聞こえるような声でひそひそと言った。
「フレッド、バカなこと言うんじゃありません!」
そう言いつつも、モリーおばさんの頬はほんのり赤くなっていた。
「いいでしょう。それだけのことを言うのなら、ロックハートより害虫駆除に詳しいってことよね?じゃあ、庭に出て、お手並み拝見しましょうか。あとで私が点検に行って、庭小人が1匹でも残っていたら……そのときに後悔しても遅いわよ!」