第15章 秘密の部屋
「そうよ、ギルデロイ」スプラウト先生が言葉を重ねる。
「昨夜でしたね?『部屋の入口は知っている』と、確かにおっしゃっていたのは」
「ひ、秘……それは、その……」
ロックハートはわけのわからない言葉を口走る。
「そうとも。『中に何がいるか知っている』と、得意げに私に語っていたでしょう?」
フリットウィック先生の声は震えていたが、確かだった。
「そ、そんなこと……言いましたっけ……?」
「言ったとも」スネイプが鋭く言い放つ。
「“自分が対決する機会を奪われたのは不運だった”とまで豪語していましたな。――さあ、夢が叶いますぞ」
職員室の空気は氷のように冷たい。
チユはマントの陰で手を握りしめた。
あれだけ見せびらかしていた笑顔が、今はうらなり瓢箪のようにしぼんでいく。
「……それでは、ギルデロイ。あなたにお任せしましょう」
マクゴナガル先生の声は冷徹だった。
「今夜こそ絶好の機会です。誰にも邪魔はさせません。お1人で怪物に立ち向かいなさい。望んでいた通りに」
ロックハートは絶望的に辺りを見回した。誰1人、助けようとはしない。
「よ、よろしい……。へ、部屋に戻って、支度を……」
震える声でそう言い、ロックハートは逃げるように出て行った。
扉が閉まる音のあと、マクゴナガル先生が深く息を吐き、鼻を鳴らす。
「これで厄介払いができました。寮監の先生方は寮へ戻り、生徒に知らせてください。――明日の朝1番のホグワーツ特急で帰宅させると」
先生たちは重苦しい顔で立ち上がり、1人、また1人と部屋を後にしていった。
マントの陰に残された3人は、互いに顔を見合わせ、息を潜めていた。
チユの胸は痛むほどに強く脈打ち続けていた。
――ジニーを助けなきゃ。
誰が何と言おうと、あの子を置いて帰るなんて絶対にできない。