第15章 秘密の部屋
「あなたたち!」
背筋が凍った。振り返ると、マクゴナガル先生がそこにいた。
唇をきつく結び、氷のように冷たい視線を注いでいる。
「い、いえ、僕たち……」
ロンがもごもご言葉を探す。
「僕たち、その、ちょっと様子を見に――」
「ハーマイオニーのことを!」
ハリーが慌てて割り込んだ。
ロンとマクゴナガル先生が同時にハリーを見つめる。
チユは胸を押さえ、勇気を振り絞った。
「……先生。ずっとハーマイオニーに会えていないんです。あの子が石にされたままで……わたしたち、ただ、顔を見たくて」
自分でも声が震えているのが分かった。けれど、それは偽りではなかった。
――ハーマイオニーに会いたい。話したい。せめて手を握ってあげたい。
マクゴナガル先生の表情がほんのわずか揺らいだ。
「……そうでしょうとも」
マクゴナガル先生の声は、氷のように張り詰めていたが、ほんの一瞬だけ震えた。
チユはその横顔にきらりと光るものを見て、胸がつまった。
――涙?
決して生徒に弱みを見せない先生が、今だけは違って見えた。
「襲われた子たちの友達が、1番つらい思いをしてきた……よくわかりました。あなたたちにグレンジャーのお見舞いを許可しましょう。ビンズ先生には私から欠席を伝えておきます。マダム・ポンフリーには、私の許可が出たと伝えなさい」
その言葉に、チユの胸が熱くなった。
「先生……ありがとうございます」
声が震えてしまったが、マクゴナガル先生はただ静かにうなずいた。
3人が角を曲がると、背後から鼻をすする音が聞こえた。
ロンが囁きながら振り返る。
「あれ、先生、泣いてたよな……」
「ロン、しっ」チユは指を口に当てた。「あの人だって人間なんだもの」
「でもさ、チユ、君のあの芝居がかった台詞、最高傑作だったぜ!」
ロンは感心したように小声で笑った。
「芝居じゃないよ」チユはふくれっ面をしてみせたが、心の奥では少し誇らしかった。
「こうなったら医務室に行って、マダム・ポンフリーに「マクゴナガル先生から許可をもらって、ハーマイオニーの見舞いにきた」って言うしかないね」ハリーが言った。