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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第15章 秘密の部屋



明日になれば、すべての謎が自然と解けるかもしれない――そうハリーは思っていた様だ。

けれど、チユは胸の奥に引っかかるものを感じていた。


「待っていれば答えが来る」なんて、ホグワーツに来てから一度だってなかった。
大事なことは、自分で掴みに行かなければならない。



だからこそ、マートルに話を聞ける機会があるなら、絶対に逃すつもりはなかった。



幸運なことに、その機会はすぐにやってきた。
午前の授業の合間、次の『魔法史』まで生徒を引率していたのは、ギルデロイ・ロックハートだった。


「私の言うことをよく聞いておきなさい」
ロックハートは胸を張り、疲れの滲んだ顔にもかかわらず誇らしげに語った。


「石にされた者たちが口を開けば、必ず最初に出るのは『ハグリッド』の名だ。つまり危険は去った。これ以上見回りなど、無用の長物なのです」


「そのとおりです、先生」
ハリーが真顔でうなずいたので、チユとロンは驚いて教科書を落とした。


「おお、ハリー!」ロックハートは髪をかき上げ、妙に優雅に微笑む。

「君のように理解の早い生徒がいると、教師冥利に尽きますな。わたしとて夜通しの見回り、授業の準備、さらには執筆活動まで――いやぁ、仕事が多くて大変なのですよ」


「そのとおりです」
今度はロンがすかさず頷き、わざとらしく感心した声を出す。
「先生、引率はここまでにしてはいかがです?あとは廊下をひとつ渡るだけですから」


「……ふむ」
ロックハートは一瞬考え込み、そして急に頷いた。
「実はそのつもりだったのです。さすがに次の授業の準備が――いや、まあ、とにかく忙しくてね」


そう言うと、ロックハートは足早に廊下の向こうへ消えて行った。


「授業の準備、ね」
ロンが鼻を鳴らす。
「どうせ髪を巻き直すだけだろ」


チユは思わず笑いを漏らした。


「でも助かったよ、あの人が扱いやすくて」
胸の奥がわくわくする。今なら、マートルに真実を聞ける。


グリフィンドールの生徒たちを先に行かせると、チユたちは脇道へ抜け、嘆きのマートルのトイレへ急いだ。
互いに小声で作戦成功を喜び合った、その時――。

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