第2章 秘密の夏休み
「さあ、ハリー、チユも。遠慮しないで食べて。夜中にあんなに飛び回って、お腹ぺこぺこでしょう?」
チユは小さくうなずいて、隣に座ったハリーの様子をちらりと見た。彼も少し照れたように笑って「ありがとうございます」と呟いていた。
「これがママのごはんの恐ろしさだよな。全部食べないと、あとで“おかわりは?”って聞かれる」
「返事が『いらない』だと、“どうして? どこか悪いの?”って心配される」
「で、最終的には“あんたたち、何もかも話しなさい!”の流れだ」
と、ふたりが真剣な顔で語り出すと、チユもハリーも思わず笑ってしまった。
そのとき、階段のほうから寝ぼけたような声が聞こえてきた。
「.....何ごとだ.......この騒ぎは.....」
振り返ると、髪をくしゃくしゃにしたパーシーが、ナイトローブのままキッチンに入ってきた。
「まさか、またフレッドとジョージのせいじゃないだろうね」
「"また”って言い方、やめてくれない?パーシ
一兄さん」
フレッドが両手を広げて言った。
「俺たち、ただ、弟とそのお友だちをちょっぴり救出しただけだよ」
「正義と愛のミッションだった」
ジョージもすました顔で続けた。
「救出.......?朝っぱらから何を......」パーシーは頭を押さえながら席に着いたが、すぐに目を丸くした。
「......ハリー?!」
「よう、パーシー。監督生バッジ磨くのやめて、朝食にしたら?」
フレッドがにやりと笑う。
パーシーはバツが悪そうに咳払いすると、パンを一枚取りながら、ハリーに「ようこそ」とぎこちなく言った。