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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第15章 秘密の部屋



「僕たち、あのトイレに何度も入ってたんだぜ。その間、マートルはたった小部屋3つしか離れていなかったんだ」
翌朝の朝食の席で、ロンは悔しそうに言った。


「その時にちゃんと話を聞いてれば……」
彼は頭をかきむしり、皿のベーコンを突っついた。


チユは小声で呟く。
「……女の子トイレに男の子が何度も入るのは、ちょっと怪しまれちゃうもんね……」


「でも、チユが一緒だったんだから、まだ良かったんだよ!」ハリーが言う。


ロンは半分頷きながらも、顔をしかめた。
「そうだけどさ……いまじゃ先生の目を盗んでトイレに潜り込むのも無理だ。あそこは最初の犠牲者が出た場所のすぐ脇だし」


3人の会話はそこまでだった。
その日最初の授業――変身術で、マクゴナガル先生が「6月1日から期末試験を行う」と発表したからだ。


「試験?」シェーマスが叫んだ。「こんな時にまだ試験があるんですか?」


ハリーの後ろでバーンと音がした。
ネビルが杖を取り落とし、自分の机の脚を1本消してしまったのだ。


マクゴナガル先生は杖をひと振りし、脚を元通りにしてからシェーマスに鋭い視線を投げる。


「こんな時でさえ学校を閉鎖しないのは、皆さんが教育を受けるためです。ですから試験はいつも通り行います」


教室中に不満の声が広がる。
マクゴナガル先生のしかめっ面はますます険しくなった。



「ダンブルドア校長のお言いつけです。――つまり、この1年間で皆さんがどれだけ学んだかを確かめる、ということです」


ハリーは机の上の白ウサギを見下ろした。これをスリッパに変身させなければならない。
だが頭は真っ白で、学んだことが思い出せそうになかった。


ロンはピーピー音を立てる杖を持ち上げて、ため息をついた。
「こんなもんで試験なんて受けられると思うか?」


チユは杖をひらりと振ると、白ウサギの耳がするりと縮み、毛並みがすべすべの布に変わりはじめた。
数秒後、机の上には片方のスリッパがちょこんと置かれていた。

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