第14章 アラゴグ
「クモの跡をつけろだって……」
ロンは袖で口を拭き、弱々しく言った。
「ハグリッドを許さないぞ。僕たち、生きてるのが不思議だよ」
「でも……」ハリーが静かに言う。「アラゴグはハグリッドを信じてた。自分の友達を傷つけないって」
「だからハグリッドってダメなんだ!」
ロンが小屋の壁をドンドン叩いた。
「怪物はどうしたって怪物なんだ!なのに、みんなが怪物を悪者にしたくないって思ったせいで、結局アズカバン行きだ!」
ロンの肩が震え、ついに堰を切ったように震えだした。
チユはそっと彼に歩み寄り、袖口をきゅっと握った。
「……でも、わたしたち、生きて帰ってこれたよ。ハグリッドが無実だってこともちゃんとわかった」
ハリーは透明マントをロンの肩にかけ、腕をとって歩くように促した。
「そうだ、ハグリッドは無実だった」
ロンは大きく鼻を鳴らし、不満げにうつむいたが、反論はしなかった。
チユの袖を握る手も、少しだけ力を緩めていた。
城がだんだん近くに見えてきた。
ハリーは透明マントを引っ張り、チユとロンの足先まですっぽり隠すと、きしむ扉をそっと半開きにした。
3人は玄関ホールをこっそり横切り、大理石の階段を上り、見張り番が目を光らせる廊下を息を殺して通り過ぎる。
ようやくグリフィンドールの談話室にたどり着いたとき、3人の肩は同時にぐったりと落ちた。