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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第13章 失われた背中、残された影



「おお、ちょっと待ってくれ、ルシウス!」
ファッジが驚いたように声を上げた。
「ダンブルドアが“停職”……だめだめ!いまという時期に、それは絶対に困る……!」


「校長の任命、そして停職も……理事会の決定事項ですぞ、ファッジ」
ルシウスは、よどみなく言葉を返した。


「それに、ダンブルドアは今回の連続攻撃を食い止められなかったのですからな」


「ルシウス、待ってくれ……ダンブルドアでさえ食い止められないなら――」
ファッジは額に汗を浮かべ、山高帽をもじもじいじりながら声を絞り出した。
「つまり、ほかに誰ができる?」


「それは、やってみなければわからん」
ルシウスの口元に、不気味な笑みが浮かぶ。
「だが、12人全員が投票で署名している……」


その言葉をかき消すように、ハグリッドが勢いよく立ち上がった。
ぼさぼさの黒髪が天井をこすり、小屋が震えたように感じられた。


「そんで……いったい貴様は何人脅した!?何人脅迫して賛成させた!?えっ!?マルフォイ!」


「そういう君の気性が、そのうち墓穴を掘るのだぞ、ハグリッド」
ルシウスは冷たく笑った。


「アズカバンの看守には、そう怒鳴らぬようご忠告申し上げよう。あの連中の気にさわれば……どうなるかは、ご存じだろう?」


「ダンブルドアをやめさせられるものなら――やってみろ!」
ハグリッドの怒声は、小屋全体を震わせた。

その恐ろしい気迫に押されて、ファングはバスケットの中で縮こまり、クインと情けない声をあげる。


「そんなことをしたら……マグル生まれはおしまいだ!この次は、“殺し”になるぞ!」


“殺し”――その言葉が、胸の奥で冷たい刃物みたいに突き刺さる。
けれど、ハグリッドの背中からは、いつもの大きくて温かいものがあふれていて……怖いのに、涙が出そうになるくらい心強かった。

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