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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第13章 失われた背中、残された影




ふと目をやると、パーシーが椅子に腰かけていた。
けれどいつもの威厳も自信もなく、青ざめた顔でぼうっと前を見つめている。
あれほど言いたがりの彼が、一言も発さない。


「パーシーはショックなんだ」

ジョージが、少し声を落としてハリーに囁いた。
「襲われたあのレイブンクローの子、監督生なんだ。パーシーは絶対に怪物が監督生を狙うなんて思ってなかったんだろう」

ジョージの言葉はチユの耳にも届いたけれど、半分も理解できなかった。
胸の奥を満たしているのはただひとつ――ハーマイオニーの不在。



(もし……このまま、ずっと戻らなかったら………わたし、どうしたらいいの、リーマス……。)


胸がぎゅうっと締めつけられる。
リーマスの優しい声や、星を見ながら寄り添ってくれた夜の温もりを思い出す。
けれど、今ここには彼はいない。



涙が零れそうになったとき、そっと隣に座る気配がした。
「……チユ」
ジョージが真剣な顔でこちらを見ていた。


「大丈夫だよ。もうすぐマンドレイクも育つし、薬ができたらハーマイオニーだって必ず元に戻る。心配しすぎなくていい」


低い声は、不思議と胸の奥に沁みていく。


それでも不安げに見上げると、ジョージはわざと肩を張ってみせた。
「それに――何かあっても俺が守る。なんてったって、俺たちは姫を守る騎士だからな!」


「……騎士?」思わず瞬きをすると、横からフレッドが身を乗り出した。

「いやいや、騎士なんて地味すぎだろ。俺は王子だ!」
「いいや、どう見ても馬番だろう」ジョージが即座に切り返す。

「馬番!?失礼な!どう見ても王子顔だ!」
「どっちかっていうと――馬のしっぽ顔だぜ、兄弟」



「……2人とも、同じ顔なのに」
思わず口からこぼれたつっこみに、双子が同時に「おっと!」と肩をすくめる。


その様子に、胸の奥で張りつめていたものがふっと緩み、頬に小さな笑みが戻った。


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