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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第13章 失われた背中、残された影



マクゴナガル先生が羊皮紙を広げ、読み上げる。


「全校生徒は夕方6時までに、それぞれの寮の談話室に戻るように。それ以後はけっして廊下に出てはなりません。授業に行くときは必ず先生が引率します。トイレに行くときでさえ、必ず先生に付き添ってもらうこと。クィディッチの練習も試合も、すべて延期です。夕方以降は、いっさいクラブ活動をしてはなりません」


言葉は耳に入ってくるのに、チユの胸には何ひとつ染み込まなかった。



先生は少し声を詰まらせながら続けた。

「言うまでもないことですが、ホグワーツはこれほど深刻な状況に陥ったことはありません。――犯人が捕まらないかぎり、学校が閉鎖される可能性もあります。……犯人について何か心当たりがある生徒は、必ず申し出てください」


羊皮紙を巻きとり、マクゴナガル先生は肖像画の裏の穴へと消えていった。



その途端、張り詰めていた糸がぷつりと切れたように、談話室中がざわめき始める。

「学校が閉鎖って本当か?」
「トイレまで先生付き添いなんて!」


不安や不満を口にする声が飛び交う中、チユはソファの端に座り込み、両手をぎゅっと握りしめた。

談話室のざわめきも、規則の厳しさも、チユにとってはもはやどうでもよかった。
ただひたすら、親友の変わり果てた姿がまぶたの裏に焼きついて離れなかった。


「これでグリフィンドール生は2人やられた。ゴーストを別にしてもだ。レイブンクローが1人、ハッフルパフが1人」


リー・ジョーダンが指を折って数え上げる。


「先生方はどうして気づかないんだ?スリザリン生は誰も襲われてない!全部スリザリンに関係してるに決まってるだろ?スリザリンの継承者、スリザリンの怪物――スリザリン生を全員追い出しちまえばいい!」


力強い声に、周りの生徒たちはうなずき、拍手まで起こった。談話室の空気は怒りと恐怖で渦を巻いている。
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