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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第13章 失われた背中、残された影


マダム・ポンフリーが身をかがめていたのは、長い巻き毛をしたレイブンクローの女の子だった。

そして、その隣のベッドに横たわっていた姿を目にした瞬間、チユの喉はきゅっと塞がれた。


「ハーマイオニー!」
ロンがうめき声をあげる。


ベッドに横たわるハーマイオニーは、まるで時間から切り離されたかのように微動だにせず、見開いた瞳はガラス玉のように光を失っていた。


「…いやだ……」


チユの唇が震える。
声にならない拒絶が胸の奥から溢れてきて、頭が真っ白になった。
何度まばたきしても、夢から醒めるような奇跡は起きなかった。


マクゴナガル先生が静かに言葉を落とす。
「2人は図書館の近くで発見されました」


先生の手に握られた小さな丸い鏡が目に入る。
けれど、チユの目はハーマイオニーから離れなかった。

首を振るしかできないハリーとロンの隣で、チユもただ必死に頭を振った。違う、こんなの嘘だ、そうであってほしい――そう願いながら。


「談話室まであなたたちを送っていきましょう」
マクゴナガル先生の声はいつになく重く、冷たい石の壁にじんと染みていく。


「いや!」
思わず声が漏れた。チユはベッドの傍らに一歩踏み出す。
「ハーマイオニーのそばにいたい……ここに残らせてください……」


マダム・ポンフリーが顔を上げ、柔らかながらもきっぱりと首を振った。
「だめよ。あなたにできることはないの。――心配なのはわかるけれど、今は休ませてあげなさい」



その言葉に胸がずきんと痛む。
抗いたいのに、立ち尽くす足は重く、涙で前がにじんだ。


「……でも……」
絞り出した声も、マダム・ポンフリーの静かな眼差しに押し留められる。


「大丈夫。彼女のそばには私がいるわ」


チユは唇をかみしめ、渋々うなずいた。
ロンとハリーに背を押されるようにして、医務室をあとにする。


談話室への道のりは、まるで夢の中を歩いているようだった。
ロンが隣で黙って歩いているのが心の片隅でわかっていたけれど、チユの思考はハーマイオニーのもとに置き去りにされていた。

どうして石にされてしまったの。
どうして助けてあげられなかったの。

胸の奥に黒い霧が渦を巻いて、足取りは重くなるばかりだった。

やがて談話室に戻ると、生徒たちはすでに集められていて、空気は、ざわめきと不安で張り詰めていた。
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