第13章 失われた背中、残された影
次の瞬間、ハーマイオニーの瞳が閃いたように輝いた。
「ハリー!わたし、いま思いついたの!図書館に行かなくちゃ!」
そう叫ぶやいなや、彼女は風のように駆け上がっていった。
「……図書館!?」
チユは思わず口を開けたまま呆然と見送る。
「それがハーマイオニー流ってやつさ」
ロンが肩をすくめ、苦笑いを浮かべた。
ハリーはその場に立ち尽くし、声の主を探そうと辺りを見回している。
それでも、時間は待ってくれない。次々と生徒たちが大広間からあふれ出し、ざわざわと話しながら正面扉をくぐっていく。
「もう行ったほうがいい」ロンが声をかけた。「そろそろ11時になる――一試合だ」
チユは頷き、彼と一緒にクィディッチ競技場へ向かった。
チユはロンと並んで観客席に腰を下ろしていた。
今日はグリフィンドール対ハッフルパフ。
空は雲ひとつなく澄み渡っていて、風も心地よい。クィディッチにはあまり詳しくないけれど、会場全体を包む高揚感に胸が少し弾んでいた。
「ハリー、今日もきっと勝つさ!」
ロンが両手で口をすぼめ、ピッチの向こうを駆ける赤いユニフォームに向かって声を張り上げる。
チユは少し笑って、でも胸の奥が落ち着かないままだった。
(さっきの……声の事…やっぱり気になる……)
試合開始を前に、選手たちが次々と入場してくる。
ウッドがゴール周りを勢いよく飛び、ハッフルパフは鮮やかな黄色のユニフォームで円陣を組んでいた。
観客席は歓声で震え、チユも思わず背伸びして選手たちを見やった。
そのときだった。
巨大なメガフォンを抱えたマクゴナガル先生が、ピッチに小走りで現れた。
スタンドのざわめきは一瞬でしんと静まり、チユは息を呑む。
「この試合は中止です!」
先生の声が響き渡った瞬間、観客席が大きく波立った。
「ええーっ!?」
「どうして!?」
生徒たちの叫びと怒号が入り乱れる。
ロンが「冗談だろ!?」と顔を真っ赤にして立ち上がり、チユも胸がぎゅっと縮んだ。
ウッドが箒にまたがったまま地面に降り立ち、必死に先生に食い下がっているのが見えた。
けれど、マクゴナガル先生は頑として耳を貸さない。