第13章 失われた背中、残された影
数日が経ち、休暇が終わると、次のクィディッチの対戦相手はハッフルパフに決まった。
ハリーは夕食後、毎晩のように練習に駆り出されることになったが、「朝練に比べれば、まだマシだ」と、少し苦笑いを浮かべながら呟く。
それでもウッドの熱意は衰えることを知らず、指示を飛ばす声は夕暮れのグラウンドに響き渡る。
チユはそんな忙しいハリーを横目に見ながら、思わず「よくもまあ、この人に毎回着いていけるな」と感心した。
土曜日に試合を控えた前日の夕方、チユはハーマイオニーと談話室でのんびり過ごしていた。
膝の上に広げられた本は――『古代ルーン文字のやさしい学び方』その厚みに、チユは思わずギョッとする。
「まさか、3年生で習うやつを今からやるの?」
「ええ、もちろんよ。……遅すぎたくらいかもしれないわ」
ハーマイオニーは涼しい顔で羽根ペンを手に取る。
すると、階段の方から慌ただしい足音が響く。
ハリーとロンが息を切らせながら駆け下りてきた。
「慌てて、どうしたの?」
チユが顔を上げると、ハリーは必死に息を整えながら答える。
「僕の部屋が荒らされて……リドルの日記がなくなってたんだ!」
「もしかして……盗まれたってこと?」チユは思わず口をつぐむ。
「そんな……だって、グリフィンドール生しか入れないはずめしょ。ほかの人は誰もここに来る合言葉を知らないはず……」ハーマイオニーは仰天した。
「そうなんだ……」ハリーも落ち着いた声でつぶやく。
チユは2人のやり取りを見つめながら、胸の奥で少しざわつくものを感じた。
談話室の静かな午後と、ハリーたちの慌ただしい様子との対比が、チユの心に不思議な緊張感と好奇心を呼び起こしていた。