第2章 秘密の夏休み
「エロールって誰?」
ハリーがふと疑問を口にすると、ロンがうんざりしたようにため息をついた。
「うちのフクロウさ。彼はもう化石だよ。配達の途中でへばるなんて、しょっちゅうなんだ」
ロンは肩をすくめて続ける。「だから、ヘルメスを借りようとしたんだけど――」
「誰を?」
首を傾げたチユに、前の席からフレッドが振り返った。
「パーシーのフクロウだよ。あいつが監督生になったとき、パパとママが買ってやったヤツ」
「でも、貸してくれなかったんだ」ロンが残念そうに言う。「“自分が必要だから”って。まあ、絶対貸してくれるようなタイプじゃないけどね」
「パーシーのやつ、この夏の行動、ちょっと変だと思わないか?」
ジョージが眉をひそめる。
「妙にこそこそしてるし、手紙を山ほど書いてるんだ。部屋にこもってる時間もやたら長いし……監督生バッジを磨くにしても、限度があるだろ?」
「ジョージ、西にそれすぎ」
フレッドが計器盤のコンパスを指差して注意した。ジョージが「あっ」と声を上げ、ハンドルを素早く切る。
チユは、後部座席からフロントガラス越しにうっすら明るくなりはじめた空を見上げた。
夜が明けかけている――東の空が、ほんのりと桃色に染まりはじめていた。
「じゃあ……」ハリーが少しだけ声を潜めて尋ねた。「お父さんは、この車を使ってること、知ってるの?」
「いや、知らない」ロンが正直に答える。「今夜は仕事で出てるんだ。ママが気づく前にこっそり車庫に戻すつもりなんだよ。間に合えばね」
「大通りが見えたぞ」
ジョージが下をのぞき込んで声を上げた。「あと10分ってとこかな。よかった、夜が明けてきてるし……」
「僕らの家はね」
フレッドがハリーに向かって語りかけた。
「“オッタリー・セント・キャッチポール”って村の、ちょっと外れにあるんだ。まあ、初めて見たらビックリするかもね。いろんな意味で」