第2章 秘密の夏休み
「いるよ」
「ドラコ・マルフォイ。あいつ、僕を憎んでる」
ハリーとロンが、息を揃えたように答えた。
「ドラコ・マルフォイだって?」と、ジョージが後部座席から振り返る。
「ルシウス・マルフォイの息子じゃないのか?」
「多分そうだよ」
「パパが、そいつの話をしてるの聞いたことある」とジョージ。
「ルシウス・マルフォイって、例のあの人の大の崇拝者だったんだって」
「ところが」
フレッドが前の席から振り返って、にやりとした。
「その“例のあの人”が消えたとたん、マルフォイときたら“全部、本心じゃなかった”って言ったらしいぜ。パパは、やつが腹心中の腹心だったって思ってるけどな」
チユは、そっと息をのんだ。
マルフォイ家に関する噂は、ホグワーツでも何度か耳にしていた。血統を誇りにしているとか、魔法省に顔が利くとか。
(……そんなマルフォイ家のクリスマスパーティにどうして彼は誘ってくれたんだろう)
「マルフォイ家に『屋敷しもべ妖精』がいるかどうかは知らないけど……」とハリー。
「そりゃ、いて当然だろ」とフレッドが軽く言う。
「金持ちで、旧家で、プライド高い魔法族の家なんだ。しかもお屋敷。妖精の1匹や2匹、飼ってたっておかしかないね」
「うちにもいたらな〜」とジョージが天井を仰ぐ。
「ママなんて毎日、アイロンかけする『しもべ妖精』がいればいいのに!ってぼやいてるのに。現実は屋根裏のお化けと庭の小人だけ!」
「その『屋敷しもべ妖精』ってさ」
チユは少し首を傾けて尋ねた。
「そんなに珍しいものなの?」
「雇うっていうより、代々仕えるって感じ。だから持ってる家は限られてる」ロンが答える。
じゃあ、やっぱり……
チユの胸の中に、嫌な予感が広がっていった。
マルフォイがそんなことを――そんなひどいやり方で――ホグワーツに戻るのを邪魔しようとしていたなんて。信じたくない。でも、可能性は……ある。
「とにかく、迎えにきてよかった」ロンが言った。
「いくら手紙を出しても返事をくれないんで、僕、ほんとに心配したぜ。初めはエロールのせいかと思ったけどー」