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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第13章 失われた背中、残された影



「やあ君たち、新しい科目の話かい?」と、パーシーが得意げに現れた。


 ロンがげんなりした声を出す。
「来たよ……講釈大臣」


「将来を考えるのに、早すぎるということはない」パーシーは胸を張った。


「例えば『マグル学』軟弱だと言う人もいるが、僕はそう思わない。魔法使いたるもの、魔法社会以外のことを完璧に理解しておくべきだ。父を見てごらん、四六時中マグルと関わる仕事をしている」」



チユは目を瞬かせ、素直に「へえ……」と感心した。が、ロンはあからさまにあくびをかみ殺している。


「兄のチャーリーは『魔法生物飼育学』を選んだ。外に出て生き物と触れ合うのが好きだったからだ。大切なのは、自分の強みを生かすことだね」


パーシーはまるでスピーチのように言い切った。



「……強みって言われても、思い浮かぶのはクィディッチくらいだよ」ハリーは苦笑する。
「大丈夫。私も浮かばない」チユがあっけらかんと言う。


「そんなことはないさ。君もよく考えるんだ、チユ」パーシーが真顔で言うと、チユはきょとんとしたあと、にこりと笑って返した。



「うん……でもまず魔法薬が続く時点で、将来が真っ暗かも」
その一言で、ロンが机に突っ伏して笑い転げ、ハーマイオニーが呆れ顔でため息をついた。


パーシーの長い講釈が一区切りすると、みんなはそれぞれにリストを見ながらあれこれ話し合いを始めた。
ハリーとロンは「同じのにしよう」と盛り上がっている。


(……結局、強みってなんだろ)
杖を使う授業以外はどれも不得意。リストを見つめても、答えは出ない。



ふと視線を上げると、教室の隅でゼロが静かに腰掛けているのが見えた。
輪の中に入ることもなく、黙って自分のリストを眺めている。


彼が何を選ぶのか気になって仕方がなくて、チユは椅子をそっと引いて立ち上がった。


「……ねえ」


小さな声で呼びかけると、ゼロはびくりと肩を揺らして顔を上げる。
「…僕?」


「うん。ゼロは、どの科目にするの?」
チユはリストを抱えたまま、机に身を乗り出した。


しばしの沈黙ののち、それから控えめに答える。
「魔法生物飼育学かな。生き物と一緒にいると……落ち着くから」



その声は周囲には届かないくらい静かだったけれど、チユの胸にははっきり響いた。
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