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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第13章 失われた背中、残された影


そして何日かが過ぎた。

チユは、ひょっとすると、もうハグリッドにあのことを聞かなくてすむのかもしれない、と心のどこかで思いはじめていた。


ジャスティンとほとんど首無しニックが石にされてから、4ヶ月が過ぎようとしていたからだ。


犯人が何者であれ、もう永久に地下へと引きこもってしまったのではないか。そう考える生徒が増え、重苦しい雰囲気は少しずつ薄れていた。


ピーブズでさえ、さすがに「オー、ポッター、いやなやつだー」の歌に飽きたらしく、今は廊下で高音を響かせながら「監督生をくすぐっちゃえ」と即興の替え歌を披露していた。



アーニー・マクミランも以前のような剣幕はすっかり影を潜め、ある日の薬草学の授業で、ハリーに向かって控えめに声をかけた。


「ポッター、飛びはね毒キノコの入ったバケツ、取ってくださらない?」


ハリーは一瞬ぽかんとしたが、チユはその姿を見て胸を撫で下ろした。
アーニーの視線に敵意がなかったからだ。



3月になると、マンドレイクの鉢植えたちが、ついに思春期の大騒ぎを始めた。
第三温室の中は、声変わりしかけの怒鳴り声と、けたたましい笑い声が聞こえてくる。


チユは、植木鉢の中から這い出そうとするマンドレイクを必死に押さえつけながら、(まるで寮のパーティみたい……)と、ため息とも笑いともつかない思いを抱いた。


スプラウト先生はその光景にご満悦で、頬をりんごのように赤くしていた。



「これで完全に成熟しましたよ。マンドレイクがお互いの鉢に潜り込もうとするのは、何よりの証拠です」


そして、すぐそばにいたハリーへ向き直ると、にっこり笑って言った。

「こうなれば、医務室にいるかわいそうな方々を、ついに蘇生させることができますよ」
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