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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第13章 失われた背中、残された影




「でも……ハグリッドが退学させられたのは、僕たち、もう知ってた。ハグリッドがいなくなってから襲撃が止んだから、リドルは表彰されたんだ。そうじゃなきゃ、『特別功労賞』なんて与えられなかったはずだ」


ハリーの言葉には自分を納得させようとする響きがあったが、同時にみじめさもにじんでいた。


ロンは少し違う角度から考えていた。
「…リドルってパーシーにそっくりだよ。ハグリッドを密告しろなんて、誰に頼まれたんだよ?」


「でもロン、実際に生徒が殺されたのよ」
ハーマイオニーの声は固い。



ハリーはしばし黙り込み、ふっと息を吐いてから言った。


「……でもわかるんだ。リドルの気持ち。だって、ホグワーツが閉鎖されたら……彼はマグルの孤児院に戻らなきゃならなかったんだ。ここに残りたいって思う気持ち、僕には……わかる。……だからどうしても襲撃を止めたかったんだよ」



その声を聞いた瞬間、チユはちらりと彼を見た。
自分と似た孤独を背負うハリーだからこそ、そこに同情してしまうのかもしれない。



ふとロンが思い出したように口を開いた。
「ねえ、ハリー。『夜の闇横丁』でハグリッドに会ったって言ってたよね?」


「『肉食ナメクジ駆除の薬』を買いにきてた」
ハリーは少し早口で答える。


その言葉のあと、教室に長い沈黙が落ちた。
風もないのに、どこか肌寒い沈黙だった。


やがてハーマイオニーが、ためらいがちに切り出した。
「……ハグリッドに直接会って、話を聞いてみるのはどうかしら?


「そりゃあ楽しいお客様になるだろうな」ロンは皮肉っぽく言う。
「こんにちは、ハグリッド。最近、城の中で毛むくじゃらの狂暴なやつをけしかけてませんか?ってね」



チユは思わず吹き出しそうになったが、笑えなかった。
ハリーとハーマイオニーが真剣な表情のままだったからだ。



結局、4人は、また誰かが襲われない限り、ハグリッドに何も聞かないでおこうと決めた。
けれどチユの胸には、まだ釈然としないもやもやが残っていた。


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